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社会環境の変化がめまぐるしく先行きが不透明な時代において、働く個人は自分のキャリアについて主体的、継続的に考える必要があります。そのような時代背景もあり、就職活動、転職活動に役立つツールとして厚生労働省が推奨しているのがジョブ・カード制度です。
ジョブ・カードという名前を聞いたことはあっても、具体的にはどのようなものなのかよくわからないという方も多いのではないでしょうか。今回はジョブ・カードの概要や活用シーン、メリット、作り方について解説します。職務経歴書との違いや、ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングについても説明します。
本記事を読むと、ジョブ・カードを自分自身のキャリア・プランニングに活用できるだけではなく、ジョブ・カードを活用したキャリア支援についても理解を深めることができるでしょう。
ジョブ・カードとは?
ジョブ・カードは、「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」の機能を担うツールとして、厚生労働省が様式を定め、広く普及を進めています。職業生活またはライフイベントの節目やキャリアコンサルティングを受けるタイミングなどで作成、書き換えることで、自身のキャリア形成の履歴を生涯に渡って蓄積できます。
キャリアコンサルティングなどの相談支援の場面でも用いられ、学生、在職者、求職者など幅広い方の求職活動やキャリア形成に役立ちます。
ジョブ・カードは大きく3つの様式(シート)で構成されており、様式1(キャリア・プランシート)、様式2(職務経歴シート)、様式3(職業能力証明シート)があります。様式1(キャリア・プランシート)には作成を容易にするキャリア・プラン作成補助シートがあります。
出典:マイジョブ・カード
ジョブ・カード制度の2つの目的
ジョブ・カード制度には大きく2つの目的があります。
①生涯を通じたキャリア・プランニング
キャリアコンサルティング等の支援の前提となる個人の履歴や、支援を通じた職業経験の棚卸し、職業生活設計等の情報を蓄積し、訓練の受講、キャリア選択等の生涯のキャリア形成の場面において活用する「生涯を通じたキャリア・プランニング」のツール
②職業能力証明
免許・資格、教育(学習)・訓練歴、職務経験、教育・訓練成果の評価、職場での仕事振りの評価に関する職業能力証明の情報を蓄積し、場面・用途等に応じて情報を抽出・編集し、求職活動の際の応募書類、キャリアコンサルティングの際の資料等として活用する、職業能力を見える化した「職業能力証明」のツール
出典:マイジョブ・カード
2015年よりジョブ・カード制度を一新
出典:マイジョブ・カード「ジョブ・カードくん」
ジョブ・カード制度は、正社員経験の少ない方を対象に、ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティング、実践的な職業訓練、就職活動などでの応募書類としての活用を通じ、安定的な雇用の促進などを図ることを目的に、2008年に作られました。2015年6月末時点ではジョブ・カードを作成した人は約132万人に上りましたが、その大半が職業訓練での活用に限られていました。
2015年からはジョブ・カード制度を一新し、個人のキャリアアップや、多様な人材の円滑な就職などを促進するためのツールとして活用するものに見直されました。学生からミドル・シニア層までさまざまな年齢層の人が活用できる様式となり、生涯を通じたキャリア・プランニングのツール、円滑な就職等のための職業能力証明のツールとなりました。
出典:厚生労働省 ジョブ・カード制度普及のためのモデル評価シート・モデルカリキュラム等を新たに追加~「ロジスティクス分野」モデル評価シート・モデルカリキュラム等作成~、10月から新たな「ジョブ・カード制度」が始まります(2015年発表)
ジョブ・カードの活用シーンとメリット
ここからはジョブ・カードの活用ステップと、学生、在職者、求職者に分けて具体的な活用シーンとメリットを解説します。
ジョブ・カードの活用ステップは以下の通りです。
学生
自分自身のことを理解して、将来どのようなキャリアを目指したいのか、そのためにどうすれば良いのかを考えることができます。それらが明確になると、就職活動で自分の言葉でしっかりとアピールできるようになります。就職活動の際の応募書類に活用することも可能です。
自己分析や自己PRに活用。価値観や強み・弱みが明確になる
学校の課程で関心を持って取り組んだこと(授業、ゼミ、実習、卒論テーマなど)、アルバイト、サークル活動、ボランティア、インターンシップ、留学、取得した資格や免許といったこれまでの経歴を可視化することができます。
自分の個性や仕事を選ぶ上での大事にしたい価値観、興味、関心事、強み、弱みを整理し、文章化することもできます。就職活動の第一歩である自己分析に活用でき、自己PRもスムーズに作成できるでしょう。また、価値観や強み・弱みが明確になることで、やりたい仕事を見つけるヒントにもなります。
就職活動でジョブ・カードから自動作成した履歴書・職務経歴書を活用
作成したジョブ・カードのデータを抽出して、履歴書・職務経歴書を自動作成することができます。エントリーシートの追加資料として、企業に効果的に自身をPRすることができます。
キャリアイメージを描くのにも有効。今後やるべきことが見えてくる
自分の個性、仕事で大事にしたい価値観や興味、関心事、強みを踏まえると、今後やってみたい仕事や働き方、仕事で達成したいことなどキャリアイメージを描きやすくなります。将来の仕事に関する目標について、5年後、10年後、20年後などの時期と共に考えていきます。
目標を達成するために、習得すべき能力、資格や今後克服すべき弱み・向上すべき強みは何か、それをいつ、どのように習得、克服、向上していくべきかを具体化していくことができます。
出典:マイジョブ・カード「学生の方へ」
在職者
これまでのキャリアを振り返り、経験から得たことや、活かせる能力・強みなどを整理することで、今後どのようなキャリアを歩みたいかを考えることができます。社内でのキャリア形成やキャリア選択の場面でジョブ・カードの作成が役に立ちます。
キャリア面談などの前に、これまでの経歴やスキルを棚おろし
これまでの職歴、スキル、取得した資格や免許、学習してきたことを可視化することができます。キャリア面談などの前にこれらの棚おろしをしておくことで、社内でのキャリア形成の方向性を明確にしたり、納得いくキャリア選択がしやすくなります。
キャリア自律の実現に向けて、どのようなキャリアを歩みたいかを見える化
社会人になってからのキャリアに関する満足度や、自分に影響を与え、印象に強く残っている経験・出来事を振り返ることで、大事にしたい価値観、興味・関心を持っていることを明確化できます。
さらに自分の強み、弱み、周囲からの期待、仕事と両立させる必要のあるプライベートに関する事項も整理します。これらを踏まえて、今後やってみたい仕事や働き方、仕事で達成したいことなどを明確にし、どのようなキャリアを歩みたいかを可視化します。実現のために今後向上、習得すべき職業能力や、その方法を検討することもできます。
出典:マイジョブ・カード「在職者の方へ」
求職者
これまでのキャリアを振り返り、経験から得たことや、活かせる能力・強みなどを整理することで、今後どのようなキャリアを歩みたいかを考えることができます。ジョブ・カードを作成することで、目標が明確になり、履歴書や職務経歴書もより充実したものとなります。
就職活動・転職活動の前に、これまでの経歴やスキルを棚おろし
これまでの職歴、スキル、取得した資格や免許、学習してきたことを可視化し、活かせる能力や強みを明らかにすることができます。自己理解を深めることは、応募先を検討する際の有効な判断材料にもなるでしょう。
仕事で活かせる能力や強みを盛り込んだ職務経歴書を自動作成して面接に持参
作成したジョブ・カードのデータを抽出して、履歴書・職務経歴書を自動作成することができます。正社員経験の少ない求職者であっても、自分の経験や強み、弱み、価値観を客観的に示すことができます。応募先の企業で活かせる能力や強みを履歴書・職務経歴書に盛り込めるので、企業に効果的に自身をPRすることができます。
キャリア自律の実現に向けて、どのようなキャリアを歩みたいかを見える化
自分が大事にしたい価値観や強み・弱み、これまでに得られた知識・能力・スキル等を整理することで、自分に最もマッチした就職目標を設定できます。さらに中長期的な視点でも今後のキャリアを考えやすくなります。自己理解・目標設定がスムーズに行えるようになり、より良い就職の実現に向けこれから何をすればいいかも明確になります。
出典:マイジョブ・カード「求職者の方へ」
職務経歴書とジョブ・カードの違いは?
これまでの職歴やスキルをまとめるという点では職務経歴書とジョブ・カードは似ています。では、職務経歴書とジョブ・カードは具体的に何が違うのでしょうか。比較して説明します。
職務経歴書とジョブ・カードの比較
項目 | 職務経歴書 | ジョブ・カード |
---|---|---|
対象者 | 求職者 | 学生・在職者・求職者 |
形式 | 自由 | 固定 |
免許・資格 (職業能力証明シート様式3ー1) |
名称と取得年月のみを記入することが一般的 | 免許・資格の詳細な内容も記入 |
学習歴・訓練歴 (職業能力証明シート様式3ー2) |
記入しないのが一般的 | 高校・専修学校・大学等での学習内容のほか、職業訓練や、資格取得等のために通った学校のことも記入 |
価値観や将来について (キャリア・プランシート様式1ー1) |
記入しないのが一般的 | 価値観、興味、関心事や、将来取り組みたい仕事や働き方、これから取り組むことも記入 |
会社の確認欄 | 無 | (確認は任意だが)有 |
ジョブ・カードの様式見本と記入項目
ここからはジョブ・カードの様式見本と記入項目について紹介します。
「職務経歴シート」の記入例
出典:マイジョブ・カード「様式2 職務経歴シート(在職者・30代)_記入例 No10.pdf」
これまでに経験した職務内容と、その仕事から得られた知識や技能について記入するシートです。原則として会社ごとに記入するとされていますが、これはシートの第2面で会社からの証明を受けられるようになっているためです。これによって就職活動時に職務経歴を証明する書類として利用可能です。会社の確認を行わない場合等は、1枚のシートに複数社の職務経歴を記入して差し支えありません。
【記入する項目】
・期間
・会社名、所属、職名、雇用形態
・職務の内容、職務の中で学んだこと、得られた知識・技能等
【記入ポイント】
「職務の内容」欄には、従事した職務の内容だけではなく、果たした役割、貢献したことを意識して記入するとよいでしょう。
例:「チームリーダーとして、メンバーの教育や業務フローの改善を行い、チーム全体の士気向上や業務効率化に貢献した。」
「職務の中で学んだこと、得られた知識・技能等」欄は、仕事の中で大変だったり苦労したことを思い出し、どのように工夫して乗り越えたか、その結果どのような学びやスキル習得に繋がったかを考えてみるとよいでしょう。
例:「プロジェクトが予定通りに進まずリーダーとして苦労したが、関係者と密にコミュニケーションをとり、進捗確認や課題の共有を丁寧に行うことで、最終的にはプロジェクトを完遂できた。この経験から関係者と協働する力を身につけることができた。」
「職業能力証明(免許・資格)」
出典:マイジョブ・カード「様式3-1 職業能力証明(免許・資格)シート(在職者・30代)_記入例 No6.pdf」
これまでに取得した免許や資格について記入するシートです。勉強中の場合も意欲や能力のアピールになりますので、そのことを明示した上で記入できます。免許や資格の証明書類(写本)を添付することで、応募時の証明に利用できます。
【記入する項目】
・免許・資格の名称
・取得時期
・免許・資格の実施・認定機関の名称
・免許・資格の内容等
【記入ポイント】
「免許・資格の名称・取得時期」には、免許や資格の正式名称を記入します。業務内容に関連する資格であれば、すべて記入します。
「免許・資格の実施・認定機関の名称」は、実施・認定機関の正式名称をウェブサイト等で確認することをお勧めします。
「免許・資格の内容等」は、何ができる免許・資格なのかということのほか、その免許・資格が与えられる基準・目安等(試験の合格基準、難易度、合格率など)を記入すると、より伝わりやすくなります。取得した理由も記入することで、意欲や向上心もアピールできます。
例:「TOEIC700点 日常生活やグローバルビジネスにおける活きた英語の力を測定する、世界共通のテストです。今後業務で英語を使えるようになりたいと思い、実力を知るために受験しました。日常生活で必要なコミュニケーションを取ることができます。また、読み書きにおいては一定程度の業務上のコミュニケーションが可能です。」
「職業能力証明シート(学習歴・訓練歴)」
出典:マイジョブ・カード「様式3-2 職業能力証明(学習歴・訓練歴)シート(在職者・20代)_記入例 No2.pdf」
これまでの学習歴・訓練歴を記入するシートです。中学校・高校・専修学校・各種学校・大学・大学院のほか、職業訓練や、資格取得等のために通った学校のことも記入します。中退の場合はその旨を記入します。
【記入する項目】
・期間
・教育・訓練機関名・学科(コース)名
・内容等
【記入ポイント】
「内容等」には、教育・訓練の内容とともに、学んだこと・得られたことも記入します。訓練や学習内容の経験が、どのように職業観に繋がったのかを意識して書くとよいでしょう。
例:「情報処理を学ぶゼミナールに所属。プログラミングを学び、卒業制作ではアプリ開発を行った。モノづくりの楽しさを知り、IT業界に進むきっかけとなった。」
「キャリア・プラン作成補助シート(学生用)」
出典:マイジョブ・カード「キャリア・プラン作成補助シート(学生用)記入例(学生・20代)_記入例 No44.pdf」
キャリア・プランを考えやすくするための補助シートで、作成後はそのままキャリア・プランシートに転記できます。価値観や強み・弱み、将来取り組みたい仕事や働き方、そのために習得すべき能力について記入します。ナビゲーションに沿って選択し、例文を参考にしながら入力できるので、仕事のイメージがわきにくい学生であってもスムーズにキャリア・プランを明確にできます。
【記入する項目】
・⾃分の個性・性格
・⾃分の個性を表現する特徴的な⾔葉
・仕事を選ぶ上でのこだわり(⼤事にしたい価値観)
・⾃分のこだわり(⼤事にしたい価値観)に影響を与えた、⼼に残る経験・出来事
・価値観、興味、関⼼事項等(⼤事にしたい価値観、興味・関⼼を持っていることなどを記⼊)
・⾃分の「強み」と「弱み」
・伝えたい⾃分の強みと改善したい⾃分の弱み
・強み等(⾃分の強み、弱みを克服するために努⼒していることなどを記⼊)
・ 将来取り組みたい仕事や働き⽅等(今後やってみたい仕事(職種)や働き⽅、仕事で達成したいことなどを記⼊)
・ これから取り組むこと等(今後向上・習得すべき職業能⼒や、その⽅法などを記⼊)
・その他(以上から、⾃⼰PRやキャリアコンサルティングで相談したいことなどを⾃由記⼊)
【記入ポイント】
「⾃分の個性を表現する特徴的な⾔葉」の欄は、その⾔葉を選んだ理由を過去の出来事をもとに記⼊します。
例:「【負けず嫌い】 部活動ではライバルに勝つために、部活終了後も残って自主練習したり、ノートをつけて日々の練習内容を振り返っていた。ライバルをよく観察していた。」
「⾃分のこだわり(⼤事にしたい価値観)に影響を与えた、⼼に残る経験・出来事」の欄は、なぜそのこだわりを選んだのか、その理由と思われる過去の経験・出来事を、できるだけ具体的に(どこで、誰と・誰に対して、何をしたか)記⼊します。
例:「スーパーでアルバイトをしていた時、常連の高齢者のお客様に親切に対応していたら、店舗宛てに感謝の手紙をもらったことがあった。誰かに喜ばれる仕事をしたいと感じた。」
「将来取り組みたい仕事や働き⽅」の欄は、価値観や興味、関心事、強み、弱みに記入した内容を踏まえて、将来の仕事に関する⽬標について、5年後、10年後、20年後などの時期とともに記⼊します。現時点でやってみたい仕事が明確に思いつかない場合は、ジョブ・カードサイト内で行える自己診断をしてみたり、「job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))」を参考にして考えることもできます。
「これから取り組むこと」の欄は、⽬標を達成するために、習得すべき能⼒、資格や今後克服すべき「弱み」・向上すべき「強み」は何か、それをいつ、どのように習得、克服、向上していくべきかを具体的に記⼊します。
参考サイト:マイジョブ・カード「自己診断一覧」、job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
「キャリア・プラン作成補助シート(在職者用)」
出典:マイジョブ・カード「キャリア・プラン作成補助シート(在職者用)記入例(在職者・30代)_記入例 No46.pdf」
キャリア・プランを考えやすくするための補助シートで、作成後はそのままキャリア・プランシートに転記できます。価値観や強み・弱み、将来取り組みたい仕事や働き方、そのために習得すべき能力について記入します。仕事をする上でのこだわりを大事にしつつ、実現したい働き方を明確にして、そのために必要な能力開発が何かを理解することで、キャリア・プランニングがスムーズに行えるようになります。
【記入する項目】
・ライフラインチャート
・社会人になって仕事を始めてから(前職も含めて)、自分に影響を与え、印象に強く残っている経験・出来事
・仕事を選ぶ上でのこだわり(⼤事にしたい価値観)
・⾃分のこだわり(⼤事にしたい価値観)に影響を与えた、⼼に残る経験・出来事
・価値観、興味、関⼼事項等(⼤事にしたい価値観、興味・関⼼を持っていることなどを記⼊)
・⾃分の「強み」と「弱み」
・生かしたい自分の強みと改善したい自分の弱み
・強み等(⾃分の強み、弱みを克服するために努⼒していることなどを記⼊)
・周囲からの期待
・プライベートに関して留意するべき事項
・ 将来取り組みたい仕事や働き⽅等(今後やってみたい仕事(職種)や働き⽅、仕事で達成したいことなどを記⼊)
・ これから取り組むこと等(今後向上・習得すべき職業能⼒や、その⽅法などを記⼊)
・その他(以上から、自己PRやキャリアコンサルティングで相談したいことなどを自由記入)
【記入ポイント】
「ライフラインチャート」は、社会人になって仕事を始めてから現在までを振り返り、キャリアに関する満足度を入力します。主観的な「自分のものさし」で、どれだけ満足したかを山や谷で表します。どのような出来事があった時に満足度が上下するかを可視化でき、価値観が明確になります。
「周囲からの期待」は、社内の関係者(上司、同僚、部下)、社外の関係者(顧客、取引先)、仕事以外の関係者(家族、友人)と3つの視点から自分への期待を考えます。
例:「社内の関係者:上司からは目標数字はしっかりと達成しつつ、後輩の育成にも力を発揮してほしいと要望されている。社外の関係者:顧客からは迅速で臨機応変な対応、最新のリアルな情報提供を求められている。仕事以外の関係者:家族からはプライベートの時間も大切にしてほしいと言われている。」
「プライベートに関して留意するべき事項」は、仕事と両立させる必要のあるプライベートに関する事項(健康、生活、家族、育児、介護等)を記入します。これらを踏まえた上で将来取り組みたい仕事や働き方を考えることで、現実的かつバランスの取れた納得感のあるキャリア・プランを考えることができます。
例:「子供が小学生のうちは土日に習い事の送迎があるので、土日休みの働き方が良い。将来的には親の介護の可能性があるので、地元に近いところで働きたい。」
「キャリア・プラン作成補助シート(求職者用)」
出典:マイジョブ・カード「キャリア・プラン作成補助シート(求職者用)記入例(求職者・30代)_記入例 No45.pdf」
キャリア・プランを考えやすくするための補助シートで、作成後はそのままキャリア・プランシートに転記できます。価値観や強み・弱み、将来取り組みたい仕事や働き方、そのために習得すべき能力について記入します。自己理解・目標設定がスムーズに行えるようになり、より良い就職の実現に向けこれから何をすればいいかも明確になります。
【記入する項目】
・⾃分の個性・性格
・⾃分の個性を表現する特徴的な⾔葉
・仕事を選ぶ上でのこだわり(⼤事にしたい価値観)
・⾃分のこだわり(⼤事にしたい価値観)に影響を与えた、⼼に残る経験・出来事
・価値観、興味、関⼼事項等(⼤事にしたい価値観、興味・関⼼を持っていることなどを記⼊)
・⾃分の「強み」と「弱み」
・伝えたい⾃分の強みと改善したい⾃分の弱み
・強み等(⾃分の強み、弱みを克服するために努⼒していることなどを記⼊)
・ 将来取り組みたい仕事や働き⽅等(今後やってみたい仕事(職種)や働き⽅、仕事で達成したいことなどを記⼊)
・ これから取り組むこと等(今後向上・習得すべき職業能⼒や、その⽅法などを記⼊)
・その他(以上から、⾃⼰PRやキャリアコンサルティングで相談したいことなどを⾃由記⼊)
「キャリア・プランシート(就業経験がある方用)」
出典:マイジョブ・カード「様式1-1 キャリア・プランシート(就業経験がある方用)(在職者・30代)_記入例 No10.pdf」
価値観や強みを踏まえて、今後取り組むべきことを明確にするシートです。キャリア・プランの作成は、これまでの職務経歴や学習歴、持っている資格を整理してから行うとスムーズなので、先に職務経歴シート、職業能力証明(免許・資格)シート、職業能力証明(学習歴・訓練歴)シートを作成しておくとよいでしょう。キャリア・プラン作成補助シートを作成済みの場合は、内容をそのまま転記できます。
【記入する項目】
・基本情報(氏名・生年月日など)
・価値観、興味、関心事項等
・強み等
・将来取り組みたい仕事や働き方等
・これから取り組むこと等
・その他
【記入ポイント】
「価値観、興味、関心事項等」の欄は、仕事をしてきた中で大切にしたいと感じたことや心がけていること、興味があることを記入します。経験したことや感じたことを、具体的なエピソードも交えて記入するとよいでしょう。
例:「顧客が潜在的に求めていることを引き出し、提案することで、顧客に喜んでもらえたときに充実感を感じる。」
「強み等 」の欄は、自分の強み、弱みを克服するために努力していることを記入します。職務経験を通じて身につけた強みや、仕事でどのように弱みを克服する努力をしているかを具体的に記入します。
例:「営業経験を通じて、ニーズを把握する質問力を鍛えることができた。仕事を抱え込んでしまう傾向があるので、早めに周囲に相談することを心がけている。」
「将来取り組みたい仕事や働き方等」の欄は、今後やってみたい仕事(職種)や働き方、仕事で達成したいことを記入します。これまで培ってきたスキルを活かして挑戦したい仕事や、直近または将来的な目標、働き方の希望についてなど、これまでの職務経験や価値観を踏まえて記入します。
例:「管理職としてチームをまとめ、部下の指導育成もできるようになりたい。海外の顧客も担当したい。場所に縛られず働けるようになりたい。」
「これから取り組むこと等 」の欄は、将来取り組みたい仕事や働き方を達成するために、今後向上・習得すべき職業能力や、その方法などを記入します。
例:「管理職になるために、まずはチームリーダーとしてメンバーの指導育成の経験を積む。海外の顧客も担当できるようになるため、まずはTOEICを受験し実力を把握する。」
「キャリア・プランシート(就業経験のない方・学卒者等用)」
出典:マイジョブ・カード「様式1-2 キャリア・プランシート(就業経験のない方、学卒者等用)(学生・20代)_記入例 No27.pdf」
価値観や強みを踏まえて、今後取り組むべきことを明確にするシートです。学校での活動歴や社会体験(サークル、ボランティア活動、アルバイト等)で特記すべきことを整理し、キャリア・プランに繋げて考えることができます。キャリア・プラン作成補助シートを作成済みの場合は、内容をそのまま転記できます。
【記入する項目】
・学校の課程で関心を持って取り組んだこと・取り組んでいること
・学校のキャリア教育で実施される科目・プログラム
・インターンシップ(正課)への参加・取組状況
・学校の課程以外で学んだ学習歴
・社会体験その他の活動(サークル、ボランティア活動、正課外のインターンシップ、留学、アルバイト、その他の活動)
・キャリア・プランシート(就業経験がある方用)の内容
履歴書
出典:マイジョブ・カード「(A3)履歴書.pdf」
ジョブ・カードを作成すると、履歴書を自動作成することができます。職務経歴シート、職業能力証明シートに記入した内容を選択して、転記することができます。
職務経歴書(ジョブ・カード準拠様式)
出典:マイジョブ・カード「職務経歴書(ジョブ・カード準拠様式).pdf」
ジョブ・カードを作成すると、職務経歴書を自動作成することができます。職務経歴シート、キャリア・プランシートに記入した内容を選択して、転記することができます。志望動機欄は、キャリア・プランシートで整理した内容をもとに検討すると記入しやすくなるでしょう。
エントリーシート(ジョブ・カード準拠様式)
出典:マイジョブ・カード「エントリーシート(ジョブ・カード準拠様式).pdf」
ジョブ・カードに記入した内容をエントリーシートに転記することで、学生の就職活動時の応募書類として活用できます。企業指定のエントリーシートがある場合も、準備資料として作成しておくとよいでしょう。
相談しながらジョブ・カードを作成することもできる
ジョブ・カードに何を書いたらいいのか分からない、今後のキャリアプランについて迷っている場合は、相談しながらジョブ・カードを作成することもできます。キャリアコンサルタントに相談することで、客観的な視点からアドバイスをもらえたり、より深く自分の大事にしたい価値観や強みに気づくことができます。これからどのようにキャリアを重ねていくのかもはっきりするでしょう。
キャリアコンサルタントに相談する(有料)
キャリアコンサルタントに相談したい場合は、「キャリコンサーチ」から全国のキャリアコンサルタントを検索し、キャリアコンサルティングの依頼をすることができます。ジョブ・カード作成支援が得意なキャリアコンサルタントを指定して検索することもできます。料金はキャリアコンサルタントによって異なります。
参考サイト:キャリコンサーチ
在職者ならキャリア形成サポートセンターで相談できる(無料)
キャリア形成サポートセンターでは、在職者の方を対象にジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングを実施しています。料金は無料で原則1回の利用とされています。キャリアコンサルティングは60分間で対面またはWEBで実施され、事前準備としてジョブ・カードを作成します。
筆者がジョブ・カードを作成したときの感想
筆者は、退職を決意したものの次にやりたい仕事が決まっていなかった際に、ジョブ・カードを作成しました。「様式2 職務経歴シート」は、所属した部署ごとに「職務の中で学んだこと、得られた知識・技能等」という項目があるため、古い職務経験についても漏れなく丁寧に振り返ることができました。昔のことだからと見逃していた経験についても、現在に繋がるスキルを習得できていたことに気付きました。
「様式1-1 キャリア・プランシート」は、「価値観、興味、関心事項等」、「将来取り組みたい仕事や働き方等」、「これから取り組むこと等」といった履歴書や職務経歴書には無い項目が多く、作成に苦労しました。しかし、改めて自分の内面と向き合い、言語化を試みることで、自分が何に悩み、何を望んでいるのかが自覚できました。
作成したジョブ・カードをもとに、キャリア形成サポートセンターのキャリアコンサルティングも体験しました。キャリアコンサルタントと一緒にキャリアの棚おろしを行い、仕事に対する気持ちを整理しました。迷いや悩みの理由を認識し、これからどのように進んでいけばいいのかを再確認することができました。
ジョブ・カードは作成するシートの種類が多く、作成する時間もかかるので、ハードルが高いと感じる方もいるのではないでしょうか。筆者もそう感じていました。しかし、就職、転職活動時だけではなく、生涯を通じて継続的に活用することができ、自分の価値観や強みに基づいたキャリア・プランニングができるという点で、とても有効なツールだと感じています。
ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングとは?
ここからはジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングについて解説します。
ジョブ・カードの作成支援ができるのはキャリアコンサルタントなど
ジョブ・カードの作成支援ができるのは、キャリアコンサルタント、 ジョブ・カード作成アドバイザー、教員(学生に対して作成支援を行う場合)、職業訓練指導員です。このうち、ジョブ・カード作成アドバイザーについては、 登録証の有効期間が終了した方はジョブ・カードの作成支援はできなくなり、2024年3月31日までに登録者全員の有効期間が終了することとなります。
出典:厚生労働省「ジョブ・カード講習について」
ジョブ・カードを使ってキャリアコンサルティングを行うメリット
相談者にあらかじめジョブ・カードを作成してもらうことで、その方の経験、強み、価値観などをある程度把握できます。限られた時間を効率的に使って、自己理解、仕事理解の気づきを促し、具体的なキャリア・プランに導くことができます。
また、ジョブ・カードが相談者と話をするきっかけになり、相談者との関係構築がスムーズに行えるのもメリットです。さらに、ジョブ・カードの構成が構造化されているため、相談のプロセス全体をコントロールしやすく、話の内容が整理され効果的な相談が可能です。
ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティング
ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティング─企業領域におけるキャリア・プランニングツールとしての機能を中心として─
キャリア支援時にジョブ・カードを応用することもできる
ジョブ・カードはキャリア支援においてさまざまな使い方ができます。例えば、企業のキャリア面談にジョブ・カードを活用することができます。キャリア面談を実施する前の事前ワークとして、キャリア・プラン作成補助シートを用いた自己理解ワークを従業員に行ってもらうといった活用例があります。
従業員にとっては、キャリア面談に臨む準備として事前ワークに取り組むことで、気づきやモチベーションの面から面談成果を最大限に上げることができます。キャリアコンサルタントにとっては、相談者についての理解が早く、焦点を絞った面談が可能になります。
ジョブ・カードを使ったキャリアコンサルティングを実施した感想
ジョブ・カードを使ったキャリアコンサルティングを実施したことのあるキャリアコンサルタントに感想を聞きました。
・ジョブ・カードに記載された内容に沿ってキャリアコンサルティングを実施できるため、大切なことを聞き漏らしたり、話が脇道にそれることが少ない。
・経験の少ないキャリアコンサルタントであっても、フォーマット化されているため安心してキャリアコンサルティングが実施できる。
・ジョブ・カードを作成することを通じて相談者の自己理解が深まり、相談したいポイントも明確になっているため、キャリアコンサルティングがより実のある時間になる。
・ジョブ・カードの記載内容が多い分、作成しただけでもかなりしっかりと振り返りができたという相談者が多い。
GCDF-Japanではジョブ・カードの作成体験を通じて基本を学ぶ
GCDF-Japanのキャリアコンサルタント養成講習では、ジョブ・カード講習テキストとジョブ・カードの講義動画(約2時間)を用いて、ジョブ・カードについて学習します。ホームワークで、自分自身のジョブ・カードを書く体験をして基本を学びます。
ジョブ・カードの講義動画では、ジョブ・カード制度の概要、ジョブ・カードを活用した支援、ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングの実際の進め方を動画で確認できます。在職者、求職者、訓練受講者といった対象者別に、ジョブ・カードを用いて実際にキャリアコンサルティングを行う様子を見て学ぶこともできます。
参考:厚生労働省「ジョブ・カード講習テキスト」「ジョブ・カード講習について」
【参考ページ】
講座カリキュラムと料金
ジョブ・カードについてのまとめ
ジョブ・カードの制度や活用メリットについてまとめました。
- ジョブ・カードは「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」の機能を担うツールである
- ジョブ・カードは学生、在職者、求職者など幅広い方の求職活動やキャリア形成に役立つ
- ジョブ・カードには「キャリア・プランシート」、「職務経歴シート」、「職業能力証明シート」の3つの様式と「キャリア・プラン・作成補助シート」がある
- キャリアコンサルタントに相談しながらジョブ・カードを作成できる
- ジョブ・カードを活用して、効果的にキャリアコンサルティングを行うことができる