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終身雇用制度が崩壊し人生100年時代と言われる中、自分自身のセカンドキャリアについて不安や戸惑いを覚えたり、関心を持つ人が増えています。
これまではセカンドキャリアというと、定年後の第二の人生やプロスポーツ選手の引退後の職業というイメージがありました。しかし近年ではその概念が変わりつつあり、さまざまな年代や状況の人にとっても身近なものになってきています。
今回はセカンドキャリアを考えるきっかけや目的、日頃から取り組めるスモールステップや考えるプロセスを解説します。
この記事を読むと、納得できるセカンドキャリアを実現するために日頃から意識すべきことや、セカンドキャリアを考える具体的な方法がわかるようになるでしょう。
セカンドキャリアとは
セカンドキャリアとは、一般的には「第二の人生における職業」のことを言います。英語の「second」と「career」を組み合わせた和製英語で、もともとはプロスポーツ選手の引退後のキャリアチェンジを指していました。
また、定年退職後や早期退職後、結婚や育児後の社会復帰時に新たに就く仕事を指す言葉としても使われてきました。つまりセカンドキャリアとは、特定の状況において人生の大きな節目を迎えた人が考えるものでした。
近年はセカンドキャリアの概念が変わってきている
出典:ワークショップ『LIFE SHIFT JOURNEY』資料より。ライフシフト・ジャパン(株)提供
これまでの日本においては終身雇用が当たり前で、定年まで1つの会社で勤め上げることがスタンダードとされていました。したがってセカンドキャリアというと、まさに「第二の人生」で就く「2つ目の仕事」という意味合いが強くありました。
しかし、個人の寿命は伸びる一方で企業は終身雇用の維持が難しくなりました。転職が当たり前となり、副業や起業、フリーランスなど多様な働き方を選ぶ人が増えてきています。30代〜50代であってもキャリアの転機が訪れることが多くなりました。
そのような背景があり近年では、セカンドキャリアの概念が「第二の人生における職業」というよりも「将来を見据えた大きなキャリアチェンジ」を指すように、言葉の意味が変化してきたのです。
リンダ・グラットンとアンドリュー・スコット の共著である「ライフ・シフト 100年時代の人生戦略」では、これまでの「3ステージモデル」から「マルチ・ステージモデル」への転換が提唱されています。
「3ステージモデル」とは、0歳〜20歳前後までは「教育」、20歳前後〜60歳前後までは「仕事」、そしてその後は「引退」というモデルです。従来のセカンドキャリアとは「引退」のステージで就く2つ目の仕事という意味合いでした。
一方「マルチ・ステージモデル」は、20歳前後で社会に出てからは会社勤め、フリーランス、学び直し、副業・兼業、起業、ボランティア...など、さまざまなステージを並行・移行しながら生涯現役であり続けるというモデルです。
人生をより充実した豊かなものにするために、将来を見据えたキャリアチェンジという意味でのセカンドキャリアを考えることが重要になってきています。
参考:Withコロナ時代だから考えたい「ライフ・シフト」〈前編〉
セカンドキャリアを考えるきっかけと目的
ここからはセカンドキャリアを考えるきっかけと目的について、ケースに分けて解説します。
中高年の早期退職や定年退職
40代や50代になると、定年を迎える前に会社を退職する早期退職について本気で検討する人も少なくありません。また、50代や60代では定年後の働き方や生き方について真剣に考える人も多いでしょう。
子育てやローンの返済もひと段落つくことで、改めて残りの人生やキャリアをどのように歩んでいくか考えたり、地元に戻って親の世話をしたり地域に貢献したいという思いからUターン・Iターンを検討する人もいます。
早期退職にしても定年退職にしても、前もって自身のセカンドキャリアを明確にしておくことは重要です。
早期退職の場合、制度を利用すると退職一時金の割増や、再就職支援、特別休暇の付与などが受けられる可能性があります。セカンドキャリアが明確になっていれば、これらの優遇措置によるメリットを最大限生かすことができます。
例えば、早期退職後に転職を希望する場合は、特別休暇を活用して資格取得をしたり、退職一時金を転職先が決まるまでの生活費にあてることで焦らず余裕をもって転職活動することができるでしょう。
定年退職の場合、かつてのように仕事を完全に引退して年金生活を送るというスタイルをイメージしている人はあまり多くないのではないでしょうか。
総務省が調査した「高齢者の就業率の推移」によると、60〜64歳の就業率は71.0%、65〜69歳は49.6%、70歳以上は17.7%となっています。時代とともに定年退職後も何らかの形で仕事を続ける人が増えています。
出典:総務省「統計からみた我が国の高齢者」P7
定年退職後の働き方には再雇用、再就職、起業の3つのスタイルがあり、それぞれメリット・デメリットがあります。
再雇用 | 再就職 | 起業 | |
---|---|---|---|
メリット | 慣れ親しんだ職場で働ける、仕事を探す負担がない | やりたかった仕事に就ける、環境を一新できる、新たな人間関係を構築できる | やりたいことが自由にできる、定年がない |
デメリット | 賃金、勤務形態、業務内容が変わる可能性がある | 就職活動をする必要がある、新しい仕事を覚えたり環境に慣れる必要がある | 収入の保証がない、失敗しても自己責任となる |
中高年がセカンドキャリアを考える際には仕事の内容や働き方だけではなく、老後はどんな場所に住み、どんなライフスタイルを送りたいのかも含めて検討することが大切です。
その際は同時にマネープランについても考えておく必要があります。家庭がある場合は、家族の将来設計も含めて同意を得て方向性を定めていくとよいでしょう。
アスリートなどの現役引退
アスリートを始めとして、歌手、モデルのようなタレント、アーティストなど、一般的に引退のタイミングが早い職業があります。
例えばアスリートの場合、オリンピックやプロスポーツの世界で活躍するような選手であっても、20代から40代といった比較的若い段階で引退を迎えることが多く、引退後も安定した生活ができることは非常に重要です。
バブル崩壊以前は、アスリートは企業に勤めながらスポーツで活躍し、引退後もその企業に残って企業に貢献することができました。しかしバブル崩壊後企業の業績は悪化し、企業で活動するアスリートの引退後の居場所がなくなってしまいました。
アスリートのセカンドキャリアの問題点として、スポーツキャリアでの成果が外部から評価されにくい、スポーツ関連分野でしかキャリアを形成できないと考えてしまう、パフォーマンスの向上に専念するあまりセカンドキャリアのことまで考えられないといったことが挙げられます。
このようなアスリートのセカンドキャリア問題に対応するため、スポーツ庁委託事業の一環として「スポーツキャリアサポートコンソーシアム」がアスリートのキャリア形成を支援する体制を整備することを目指して創設されました。
また、日本オリンピック委員会は就職支援制度である「アスナビ」を展開しています。現役トップアスリートが競技をしながら仕事のできる環境を整えるために、企業への就職を望むアスリートと競技活動に理解を示す企業とをマッチングしています。
参考:スポーツキャリアサポートコンソーシアム
日本オリンピック委員会アスナビ
※GCDF-Japanを運営しているキャリアカウンセリング協会は、スポーツキャリアサポートコンソーシアムの会員団体です。アスリートキャリアコーディネーター育成プログラムの開発・運営に協力しています。
出産・育児後の女性の社会復帰
出産や育児を機にキャリアを中断していた女性が、セカンドキャリアを考える必要性が高まっています。内閣府の調査によると、共働き世帯は夫婦のいる世帯全体の7割を超えています。
出典:内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和4年版 共働き等世帯数の推移」
背景には世帯年収の減少、労働意識の変化などがあります。
厚生労働省の調査によると、全世帯の平均所得は、1994年の641.1万円から下がり続け、2018年には514.1万円となっています。経済的な安定のために、出産・育児後の社会復帰を望む人が増えています。
出典:厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-」
また、夫は外で働き妻は家庭を守るといった考え方は時代とともに大きく変化しました。出産や育児で一度仕事を離れたとしても家族だけではなく社会との関わりを持ちたい、これまで培ったスキルや経験を無駄にしたくないと考える人が増えています。
厚生労働省の調査によると、第一子出産前後の女性の継続就業率は出産前有職者を100とすると出産後の継続就業率は69.5%です。雇用形態別にみると正規職員の就業継続率は83.4%、パート・派遣は40.3%となっており正規職員と比較すると低水準です。
出典:厚生労働省「第一子出産前後の妻の継続就業率・育児休業利用状況」
出産・育児後の女性の働き方は、同じ会社で働く、別の会社で働く(正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイト)、フリーランスになる、起業するなどさまざまな選択肢があります。また、働き方もフルタイム、時短勤務、在宅勤務などバリエーションがある分、選択が難しく感じることがあるでしょう。
出産・育児後の女性がセカンドキャリアを考える際には、仕事をする目的は何か、ワークライフバランスをどのように保つか、5年、10年先を見据えた中長期的なキャリアをどのように考えるかなど、複数の観点から検討することが重要です。
生活が一変するような転換期を指す場合も
セカンドキャリアの概念は「第二の人生における職業」から「将来を見据えた大きなキャリアチェンジ」を指すようになってきています。年齢やライフステージによる変化だけではなく、20代や30代であっても生活が一変するような転換期を経験することはあるでしょう。
具体的には転職、Uターン・Iターン、副業、起業などが考えられます。例えば新型コロナウイルスの感染拡大の影響による業績不振をきっかけに、異業界に転職したり副業を始めた人もいるでしょう。また、テレワークの推進により自身の働き方を見直し、Uターン・Iターンを果たした人もいるでしょう。
セカンドキャリアを考えるきっかけは人生に複数回起こり得ます。終身雇用制度が崩壊した今、変化する環境において自らのキャリア構築と学習を主体的かつ継続的に取り組むことが求められています。
セカンドキャリアを考えるプロセス
セカンドキャリアを考えるには、まず何から手を付けてどのような手順を踏めばよいのでしょうか。ここからはセカンドキャリアを考えるプロセスについて説明します。
持っているスキルや大事にしたい価値観を棚卸し
まず初めにやるべきことは自分について理解することです。以下のような項目について棚卸しするとよいでしょう。
- テクニカルスキル
(業務を遂行するために必要な専門的な知識や技術、能力、資格)- ポータブルスキル
(業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキル)- 価値観
(望ましいライフスタイル、働き方、就業環境など)- 興味関心
- 適性
- 将来の希望や目標
以下のような現実的な問題についても洗い出しておく必要があります。
- 金銭面の課題
- 健康面の懸念
- 育児・介護の必要性
- 家族の同意
世の中の動きを見ながら、職業や仕事を調べる
次に、職業や仕事、労働市場の動向など自分が取り得る選択肢に関する情報を収集します。自分が希望するような仕事は存在するのか、どのような経験やスキルが求められるのか、収入や働き方などの条件の相場について情報収集します。
定年退職の場合は、再雇用の契約内容(賃金、勤務時間、契約期間、雇用形態、仕事内容など)や年金による収入見込みについても情報収集する必要があるかもしれません。
キャリアプランを明確にする
出典:マイジョブ・カード「キャリア・プラン作成補助シート(求職者用)記入例(求職者・30代)_記入例 No45.pdf」
自己理解と仕事・環境理解ができたら、キャリアプランを明確にしていきます。キャリアプランを考える際に、厚生労働省が推奨しているジョブ・カードの「キャリア・プラン作成補助シート」を活用するのもよいでしょう。
シートには価値観や強み・弱み、将来取り組みたい仕事や働き方、そのために習得すべき能力について記入します。自己理解・目標設定がスムーズに行えるようになり、自分が望む将来像の実現に向けこれから何をすればいいかも明確になります。
【関連記事】
キャリアデザインとは?意味や目的、設計方法を解説
「キャリア・プラン作成補助シート(求職者用)」
キャリアコンサルタントに相談する
セカンドキャリアを考えるプロセスにおいて、自分ひとりで考えていると堂々巡りになってしまったり、第三者の客観的な意見を聞きたいと思うこともあるでしょう。
そのような時はキャリアコンサルタントに相談することで、考えを整理したり、自分ひとりでは気づかなかった視点を持つことができます。
筆者自身もキャリアコンサルタントとしてセカンドキャリアの相談にのることがありますが、自分には特別なスキルもないし、やりたいことも特に浮かばないと言う人は少なくありません。
しかし対話を深めていくと自分の培ってきたスキルや強み、大事にしたい価値観、興味関心に改めて気づき、セカンドキャリアにつながるヒントが見つかるという経験をたくさんしてきました。
セカンドキャリアを実現するためのステップや、得られそうな協力、支援を一緒に検討することもあります。キャリアコンサルタントに相談することで、より実現可能性の高い、納得のいくセカンドキャリアを考えることができるでしょう。
日頃から取り組める!セカンドキャリアへのスモールステップ3選
いざセカンドキャリアを考えようと思っても、ハードルが高いと感じる人が多いのではないでしょうか。ここからは日頃から取り組める、セカンドキャリアを考えるスモールステップを3つ紹介します。
最近では「越境学習」*という言葉も注目を集めていますが、納得いくセカンドキャリアを実現するためには、日頃から視野を広く持ち多様な価値観に触れておく必要があります。
*越境学習・・・ビジネスパーソンが所属する組織の枠を越え(“越境”して)学ぶことであり、「知の探索」によるイノベーションや、自己の価値観や想いを再確認する内省の効果が期待されています。
出典:経済産業省「越境学習によるVUCA時代の企業人材育成」
セミナーや研修に参加して、自己理解を深めておく
日頃から自分のスキルや能力を整理しておくこと、自分の望むライフスタイル、働き方を考えておくことは重要です。自治体やハローワーク、企業が開催するセカンドキャリア支援セミナーや研修に参加するのもよいでしょう。
キャリアコンサルタントの養成講習に参加したことで、自分のことがよく理解できた、次に進みたい道がはっきりしたという声を聞くことがよくあります。
キャリアコンサルタント養成講習「GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム」では、心理検査を受けたり、自分自身のライフロールを振り返ったり、職務経歴書を書いてみる機会があります。
これらを通じて自分自身のキャリアの「これまで」と「これから」について向き合うことができます。さまざまなバックグラウンドを持つ受講者同士でディスカッションしたり、ふとした会話をする中で、セカンドキャリアにつながる気づきやヒントが得られることもあるでしょう。
人的ネットワークやコミュニティを広げておく
日頃から人とのつながりを大切にしておくことは、セカンドキャリアを考える際にプラスに働きます。人的ネットワークを活用することで、具体的な仕事や有力な情報を持つキーマンを紹介してもらったり、これまで知らなかった新たな仕事を知るきっかけも生まれやすくなります。
「同じ部署の同僚」だけとつき合っている人よりも、「ボランティア・NPO」「社外ネットワーク」「スクール・講座・大学」「違う職場の学び仲間」など、社外のコミュニティにも所属している人のほうが、これからの人生やキャリアに対して、明るく、前向きなイメージを持っているという調査結果もあります。
気になるコミュニティがあれば積極的に参加し関係性を作っておくことが、セカンドキャリアの広がりにつながります。
参照:リクルートワークス研究所「どう変わる?21世紀のライフキャリア・デザイン」
本業とは別の「パラレルキャリア」を積み重ねる
納得いくセカンドキャリアを実現するには「パラレルキャリア」について意識しておくことも効果的です。
「パラレルキャリア」はピーターF.ドラッカーが「第二の人生を始める方法」として提唱しました。これは本業の仕事の他に非営利活動をすることで、会社や家庭とは別の「もう一つのコミュニティ」を持ち、より広い視野や経験、より精神的に豊かな生き方が出来るという考え方です。
ドラッカーがいうところの「パラレルキャリア」は、金銭的報酬がある副業ではありません。具体的には震災支援、PTA、父母会、スポーツチームサポート、自治会活動などを指します。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査によると、パラレルキャリアを経験することで、現在の会社での仕事やキャリアに役立っているという声が多く聞かれました。例えば以下のような意見がありました。
- 仕事に役立つスキルや経験が身についてきている
- 結果的に、今のキャリアと重なってきている
- 何もない所から何かをつくり上げて結果を出すという練習が出来た
- ボランティアのマネジメントを通じて、仕事の工夫につながっている
- 仕事につながった
- 社会問題を考えるきっかけ、自分のキャリアを考えるきっかけになった
パラレルキャリアを積み重ねることは、自身の考え方や生き方、あるいは人間関係や仕事に副次的によい影響を与える効果があると言えるでしょう。
出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「生涯現役を見据えたパラレルキャリアと社会貢献活動―企業人の座談会(ヒアリング調査)から―」
シニア世代のセカンドキャリアを支援している、キャリアコンサルタント 石川英一氏にインタビュー
長きにわたって、ソニー株式会社の人事部門でシニア社員のキャリア支援に携わり、昨年、定年退職をされた石川英一さん。
支援者と当事者の経験から、セカンドキャリアについてのお話しを伺いました。
― まずはソニー在籍時に関わられていた、シニア社員のキャリア支援について教えてください。
私が50歳の時、新しく設立されたEC人事部に異動しました。ECのEはEmployees(従業員)、CはCareerConsulting(キャリアコンサルティング)の意味です。
EC人事部では、シニア社員向けのセカンドキャリア支援をするということで、まずは50代社員向けにキャリアデザイン研修と研修後のキャリアコンサルティングを始めました。
2013年に始まった当初は、働く人が自分のキャリアを考えるということが今ほど浸透しておらず、理解を得るのに苦労しました。10年近く経った今では、むしろ、会社がキャリア支援をやってくれてありがたいと思う社員が増えてきている感じがします。
先日キャリア面談した方が「以前は、何でキャリア研修なんてやるんだ?きっと何か裏があるだろうと思っていたけれど、何年か経って、やっぱりああいう研修やった方がいいなって思うようになりましたよ」と言ってくれたのは嬉しかったですね。
ソニーでは、60歳の定年にそなえて50代前半と57歳と2回研修を行います。
研修を通じて、家族のこと、自分のやりたいこと、お金のこと、いろいろ考えます。
60歳を迎え、相当数の社員は独立や転職をしますが、ソニーに残って65歳まで再雇用で働く選択をする方も結構います。
給与は大幅に減りますが、長年通い慣れた職場に、慣れた仲間と変わらず仕事できることにメリットを感じるようです。エンジニアの中には、面白くて最先端な仕事ができるソニーがいいからと残る方もいらっしゃいます。
そうは言っても再雇用は65歳までです。
65歳になったらどうするのですか?と聞くと、多くの方はそこまで考えていません。EC人事部では、現在は30代から50代の節目に研修を行っていますが、今後、再雇用者向け研修も導入を検討しているところです。
― そして石川さんご自身も、昨年60歳を迎えて定年退職をされたそうですね。
昨年6月に定年退職し、現在はGCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムの講師をやっています。
定年退職後に何をするか、具体的に決めていなかったんですけれども、GCDFの講師になりませんか?と声をかけていただいたことがきっかけで、定年退職する前から始めました。今は本業がなくなったので、講師が本業という感じですね。
GCDFとの関わりは、2012年にEC人事部に異動したとき、GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムを受けて、キャリアコンサルタント資格を取得したのが始まりです。
私はGCDFを受講した側なので、まさか先生になれるなんて思っていませんでしたが、先生ができるのならすごくいいなって思ったのが一番でした。ありがたいです。
GCDFの受講者は、高い受講料を払って学びに来るわけで、みなさん一生懸命なんですね。 一生懸命な人を指導する講師をやるっていうのは、やっぱり楽しいじゃないですか。意欲の高い方が多く来てくださってるので、講師としても一生懸命やらなきゃって思わされるところもありがたいです。
― 講師業のない日はどのように過ごしていらっしゃいますか?
今、GCDFの登壇は週1回程度ですので、過去に携わっていたソニーのキャリアデザイン研修の講師と研修後のキャリア面談もやらせてもらっています。
それでもまだ時間があるものですから、週3回は大学に通っています。
シニアの学び直しができる大学で、教養を学びながら江戸時代の文人の研究をしています。同級生が100人いて、授業も結構満員なんです。週1回のゼミで論文指導もあるんですよ。
最近、キャリアコンサルタントの職能団体の活動でちょっと役割をいただきましたので、その活動はしていますね。
ただ、もうちょっと何かできないかなと思ってますよ。
仕事をしているときは時間がなかなか取れなくてできなかった習い事もできたらいいなと思っています。きっと、大人になっての習い事は楽しいんじゃないかなと想像しますね。
― キャリアチェンジには心配や不安がつきものかと思いますが、石川さんも不安になったりされましたか?
もちろんです。
今でも、仕事がなくなるんじゃないかなとか、お金を稼げなくなると不安になるだろうなとか思ったりします。
ちょっとでもいいので、複数のところから収入を得られるようなフォーメーションにしたいなと今でも思っていますね。同じだけの収入を得るにしても、3か所からもらうのと1か所からもらうのとでは、やっぱり3か所からもらった方が安心だなとは前から考えていました。
もうひとつは、何もやることがない時間が多いのは嫌だなと思っていました。お金抜きでも、やれることがあった方がいいなと。
在職中はあまり自覚してなかったんですけれども、会社にいれば、いろいろな種類の仕事をやっているんですよね。ところが、定年退職後にいろいろな仕事が一切なくなると、結構ヒマなんですよ。だから、再雇用契約で出社を続ける気持ちもわかります。
セカンドキャリアは楽なところはありますが、一方で張り合いがないところもあります。
大げさですけれども、会社にいる時は、日本経済の中のこういう位置付けの中で、こういうことをやって将来こうなるということを想像しながら仕事していました。
ところが最近は、新聞を読みながらこのニュースは会社の中では大騒ぎだろうな、大変だろうなと思うものの、でも今の私にはあまり関係ないしなって終わってしまう感じです。
世界が狭くなってるなって感じますね。
― 石川さんご自身も定年退職を経験されて、シニア社員向けのキャリア支援に変化はありましたか?
まもなく60歳を迎える人には、年金の請求手続きやハローワークでの失業保険の申請方法、産業雇用安定センターの求職者登録の仕方などを面談でお伝えしてきました。
面談する方にはあらかじめ調べた上でお伝えしていましたが、60歳になったことをきっかけに、すべて自分でも体験してみました。結果、お伝えしていることは間違ってなかったと確かめることができて、自信を持てるようになりましたね。
― お話しを伺っていると、セカンドキャリアで何がしたいか、早いうちから考えておくのはよさそうですね。考えるにあたって、大事だと思われることはありますか?
やりたいことを持ちながらも、お金の裏付けをきちんと確認しておくことが大事。
とても現実的な話ですけれど、それに尽きるんじゃないかなと思います。
いざセカンドキャリアを考えなければならなくなったときに、好きなことがないという人も結構いるんですね。だから、今は忙しくてできないけれど、いつかやってみたいことがあれば、 頭の中に置いたり記録したりしておけば、60歳以降に役立つんじゃないかと思います。
シニア社員の面談をしていると、いろいろな話を聞きます。
定年退職後に、保育士になった人や塾の先生になった人、学童保育でお世話をする人もいます。
日本全国を車で旅したいとか、システム開発のコミュニティに参加して技術で貢献したいとか、小料理屋を開きたいとかなど、いろいろなアイデアがあっておもしろいです。
ただ、やりたいことをするためには、お金の不安を少なくするのも大切ですね。貯金と年金でちゃんと100歳まで生きられるのかどうか、一生懸命計算したり、収入源を見つけたり、しっかり考えておくのは必要ですね。
セカンドキャリアについてのまとめ
セカンドキャリアについてまとめました。
- セカンドキャリアとは一般的には「第二の人生における職業」のことを言う
- セカンドキャリアを考える代表的なきっかけは、中高年の早期退職や定年退職、出産・育児後の女性の社会復帰、アスリートなどの現役引退などがある
- 近年では「将来を見据えた大きなキャリアチェンジ」という概念に変わってきた
- セカンドキャリアを考えるプロセスは、自己理解→仕事・環境理解→キャリアプランの明確化
- セカンドキャリアの検討は日頃からスモールステップで取り組んでおくとよい