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人生100年時代、働く期間は伸びる一方、年功序列や終身雇用制度は崩壊し、働く個人が自分自身でキャリアを考える必要性は日に日に増しています。
「キャリア自律」という言葉を聞き、どういう意味なのか、今の自分はキャリア自律ができている状態なのかなど、気になる人も多いのではないでしょうか。
今回は「キャリア自律」とは何か、どのような考え方をもって取り組んでいくべきかについて解説します。
この記事を読むと、キャリア自律に取り組むためのヒントがわかるようになるでしょう。
キャリア自律とは
まずは、キャリア自律の定義の前に「キャリア」と「自律」についてそれぞれの意味を確認します。
「キャリア」とは「生涯にわたる職業選択(ライフスタイルの計画、自由時間、学習、家族の活動も含む)に関わる活動・態度」を意味しています。
出典:『GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム テキストブック1』株式会社リクルートマネジメントソリューションズ、2024年、p.26より引用
「キャリア」とは?支援の専門家であるキャリアコンサルタントが解説
「自律」は国語辞典には、次のように書かれています。
自分で決めた規則を意識し、自らの行動をコントロールする「自律」と他の助けを借りずに一人で行動する「自立」では意味が異なります。
1990年代のアメリカで提唱されはじめた概念
キャリア自律(Career Self-Reliance)は、1990年代半ばにアメリカで提唱されはじめた概念です。
1980年代のアメリカは経済成長率が低下、雇用面を中心としたリストラクチュアリング(事業再編)が進められ、失業者が増加しました。
失業者が増加した状況を経て、ウォーターマンは「社員が一つの会社でキャリアを積んでいく時代は終わった。社員は会社の成功にコミットしながら競争力あるスキルを身につけ、キャリアを自らマネージしていかなければならない」と提唱しました。
これが、キャリア自律が提唱された始まりとされています。
キャリア自律の解釈はさまざま
「キャリア自律」の解釈はひとつに限らず、さまざまな研究者による概念が提唱されています。ここでは、主要となる概念をピックアップしてご紹介したいと思います。
キャリア・アクション・センター(アメリカ・カリフォルニア州)
アメリカ・カリフォルニア州に拠点を置くキャリア・アクション・センターでは、キャリア自律型キャリア開発モデルを下記のように定義しています。
「めまぐるしく変化する環境の中で、自らのキャリア構築と継続的学習に積極的に取り組む、生涯にわたるコミットメント*」
*コミットメント・・・ビジネス上では、責任を持つ、約束をするという意味で多く用いられる
花田光世 慶應義塾大学名誉教授
花田光世先生は、キャリア自律について以下のように述べられています。
岡田昌毅 筑波大学教授・堀内泰利 筑波大学教授
岡田先生・堀内先生は、キャリア自律について以下のように定義付けています。
自己認識と自己の価値観、自らのキャリアを主体的に形成する意識をもとに(心理的要因)、環境変化に適応しながら、主体的に行動し、継続的にキャリア開発に取り組んでいること
ご紹介した3つの解釈を見ますと、以下のような共通項があると言えます。
①自分の能力・適性、価値観をよく理解したうえで
②環境変化に対応しながら
③キャリア計画を立てて
④実現に向けて行動すること
次からは、キャリア自律が必要と言われる理由についてご説明します。
なぜ、キャリア自律が必要なのか?
キャリア自律、必要なのかもしれないとは思っていても、なかなか重い腰が上げられないということもあると思います。
キャリア自律が必要と言われる理由について、改めて3つの視点から述べてみます。
キャリア開発の主体が「企業」から「個人」に変化
これまでの日本企業は、模範となるキャリアパスやロールモデルを社員に示し、人事異動を重ねながら社員のキャリア開発を実施してきました。
昨今のVUCA時代においては、長期に渡って約束できる確実なキャリアパスやロールモデルを示すことが難しくなり、社員が自分自身でキャリアを考える、会社はそれを支援する、という役割に変化してきたのです。
人生100年時代、長く元気に働き続けるため
リンダ・グラットン『ライフ・シフト100年時代の人生戦略』をきっかけに、「人生100年時代」という言葉が急速に浸透しました。
『ライフ・シフト』の中では、65歳の定年以降も職業人生が続くことが前提になっています。会社勤めや学び直し、ボランティアなどのさまざまなステージを並行・移行しながら生涯現役であり続けるという「マルチ・ステージモデル」が提唱されています。
企業の寿命よりも、人の寿命のほうが長くなる時代には、自分のキャリアを特定の所属先に委ねるわけにはいかなくなっています。
近年では、副業や社会人の学び、プロボノ、ボランティアなどの社外活動を並行している方も増えてきています。
生涯現役で元気に活躍し続けるためには、自らが何を大事にしてキャリアを歩むのかが重要です。
出典:平成29年12月 産業人材政策室「人生100年時代」の企業の在り方~従業員のキャリア自律の促進~
キャリア自律の参考になる考え方とは?
自律的に自身のキャリアを形成するための考え方として、2つの理論を紹介します。
プロティアン・キャリア
「プロティアン・キャリア」はアメリカの心理学者ダグラス・ホールによって提唱された概念です。
社会や環境の変化に適応して、仕事や働き方を柔軟に変えていくというキャリアモデルです。
「プロティアン・キャリア」は1976年に発表された理論ですが、終身雇用制度の崩壊や人生100年時代の到来といった時代の変化に伴って改めて注目されています。
キャリアの主体者は組織ではなく個人にあること、キャリアの目的は組織での昇進や権力ではなく、個人の自由や成長であること、キャリアの成果は地位や給料ではなく、個人の心理的な成功であることが提唱されています。
プロティアン・キャリアとは?意味と変化の激しい時代のキャリア形成方法について解説
キャリア・アダプタビリティ
キャリア自律への一歩を踏み出すときに、キャリアの適応力「キャリア・アダプタビリティ」について意識しておくのもよいでしょう。
ここでは、サビカスが提唱した4つの要素をご説明します。
- キャリア関心
個人の職業にかかわる将来への関心を表す、4つのうち最も重要な要素- キャリア統制
個人が自らのキャリア構築に責任を持っていると認識している- キャリア好奇心
自分自身と職業とを適合させることに対して、知的好奇心を持ち、探索する- キャリア自信
より自分に適した教育や職業上の選択を行うために必要な一連の行動にうまく取り組めるという自己効力感
出典:『GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム テキストブック1』株式会社リクルートマネジメントソリューションズ、2020年、p.153-154より引用
このように、キャリア・アダプタビリティは、個人が自身の属する集団とかかわりをもったり、キャリアを構築したりするプロセスに焦点をあてた概念です。
仕事が変わる頻度が高く、頻繁に過渡期や転換期が訪れる現代においては、この概念を理解しておくとよりよいキャリア形成につながるでしょう。
キャリア自律を促進するために必要な能力とは?
キャリア自律を促進するために必要な能力についても触れておきたいと思います。
主体的に選択するための6つの特性
環境変化の中にあっても、自分の強みや弱みを自覚しながら能動的にアクションを起こしていくには、以下6つの特性が最重要なポイントであると、花田光世先生らは提唱しています。
生き抜く力=トータルな人間力
キャリア開発にあたっては、仕事で必要なスキルや知識、役割や価値などが観点に置かれています。一方、キャリア自律では、人間個人の力や能力が重要であり、生き抜く力=トータルな人間力を、花田先生は5つの要素では表現しています。
キャリア自律を促進する取り組み
さて、キャリア自律を具体的に促進するための取り組みをご紹介します。
キャリアをデザインする
キャリアデザインとは、自分が将来どのようになりたいのか、どんな自分でありたいのかをイメージし、働き方や生き方を主体的に設計し、実現していくことです。
企業で行われるキャリアデザイン研修では、まず自己理解と環境理解を深めることから始めます。
自己理解を深める
仕事の価値観、モチベーションの源泉、能力、コンピテンシーの特性、強み、やりがい、生きがいなどを考えます。
環境理解を深める
外部環境の変化や、企業に勤める方では、会社で求められる役割、能力、姿勢、会社以外の利害関係者からの期待、今後のライフイベントなどを考えます。
2022年に開催されたセミナーのアーカイブ動画では、「100%個人起点型キャリアデザインプログラム ミライフキャリアデザイン」をベースに、キャリア自律に有効なキャリア支援プログラムについての理解を深められます。
「キャリア自律を考える―キャリア自律に有効なキャリア支援プログラムの条件とは?―」(2022年1月)
キャリアコンサルティングやキャリア研修を受ける
いきなりキャリアデザインしましょうと言われてもハードルが高い場合には、キャリアコンサルティングやキャリア研修で専門家のサポートを受けながら、自身の強みや価値観をじっくり言語化していくのもおすすめです。
エール株式会社の篠田真貴子さんの講演では、中高年のキャリア支援に対話を活用することが効果的であったという事例が紹介されています。
「キャリア自律を考える ―中高年のキャリア課題に対する 『対話型』支援とは?―」(2022年8月)
越境学習を経験する
石山恒貴/伊達洋駆「越境学習入門―組織を強くする冒険人材の育て方―」によれば、越境学習とは「ホームとアウェイを往環する(行き来する)ことによる学び」と定義されています。
”アウェイ感”をあえて体験することによって、実は得意だったり強みだったりすることに客観的に気づけたり、イノベーションのきっかけ、中高年層の活性化促進などの効果が期待され、注目されている活動です。
越境学習とは?意味と注目される理由、キャリア形成への効果について解説
下記のセミナーアーカイブ配信では、石山恒貴先生による越境学習についての解説や実証インタビューへの知見について学ぶことができます。
「キャリア自律を考える ー『越境学習』がもたらす個人と組織への影響とは?ー」(2022年6月)
キャリア自律についてのまとめ
最後に、キャリア自律についてまとめました。
- 1990年代半ばにアメリカで提唱されはじめた概念
- キャリア自律とは、変化する環境の中で、自らのキャリア構築と継続的学習に積極的に取り組む、生涯にわたるコミットメント
- 能動的にアクションを起こすためには6つの特性が重要と考えられている
- 生き抜く力=トータルな人間力も不可欠
- キャリアコンサルティングなどのキャリア自律を促進する取り組みもある