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キャリアコンサルタントが活動する上で、その使命を果たすために守るべき基本的な事項をまとめたものが「キャリアコンサルタント倫理綱領」です。

「倫理綱領」という言葉の響きからとっつきにくさを感じる方もいるかもしれませんが、その内容はけして難解なものではなく、キャリアコンサルタントとして活動する上で常に意識すべき大切なことが記されています。

今回は、キャリアコンサルタント倫理綱領とは何か、制定された背景、内容について具体例を挙げながら解説します。国家資格キャリアコンサルタント試験で問われる内容や、キャリアコンサルタントを目指す上で学ぶ倫理についても紹介します。

この記事を読むと、キャリアコンサルタント倫理綱領の重要性や、キャリアコンサルタントに求められる姿勢や態度、行動規範について理解できるでしょう。

キャリアコンサルタント倫理綱領とは

キャリアコンサルタント倫理綱領を読む

キャリアコンサルタント倫理綱領は、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会によって2008年に制定され、2016年に現在の内容に改正されました。

「相談者のキャリア形成上の問題・課題の解決とキャリアの発達を支援し、もって組織および社会の発展に寄与する」というキャリアコンサルタントの使命を果たすための基本的な事項が定められています。第1章にキャリアコンサルタントが自らを律する「基本的姿勢・態度」、第2章に相談者等との関係で遵守すべき「職務遂行上の行動規範」を示しています。

出典:キャリアコンサルタント倫理綱領 序文

倫理綱領とは?

「倫理」とは道徳やモラルと同義で、社会生活で人の守るべき道理、人が行動する際、規範となるものです。

「倫理綱領」とは、専門家や職業団体が自らの義務や活動において遵守すべき倫理的な基準や行動規範を明確にし、社会的に表明するものです。

キャリアコンサルタントだけではなく、看護職、臨床心理士、精神保健福祉士、社会福祉士、社会保険労務士、保育士などにもそれぞれの倫理綱領が存在します。

人はこれまでの人生で培ってきたそれぞれの倫理観を持っています。しかし、専門家として職務にあたる際にはその倫理観は個人的なものであってはなりません。専門職として求められる、または禁止される態度や姿勢、職務上の行動についての基準や規範を明文化したものが倫理綱領です。

なぜ、キャリアコンサルタント倫理綱領が制定されたのか?

キャリアコンサルタント倫理綱領は、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会によって2008年に制定されました。

背景には2008年から「国家検定 キャリアコンサルティング技能検定」がスタートしたことがあります。国が定める専門家としての試験を行うためには、まず専門家としての倫理を確立する必要があったのです。

その後、2016年にキャリアコンサルタント倫理綱領は大きく改定されました。その背景には、「職業能力開発促進法」の一部改正が行われ、キャリアコンサルタントの国家資格化・登録制度の創設が行われたことがあります。

改正職業能力開発促進法において、キャリアコンサルティングは、「労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと」、キャリアコンサルタントは、「キャリアコンサルタントの名称を用いて、キャリアコンサルティングを行うことを業とする」と明記されました。

キャリアコンサルタントは、名称独占資格である国家資格保有者として、「個人の人生設計に関わること」の責任と重要性を従前にも増して自覚し、一層高い倫理観を持って活動することが求められることとなりました。

そこで、キャリアコンサルタントが相談者、組織、社会の信頼を得て自らの職業倫理を高め確かなものにする拠り所として、2016年に現在のキャリアコンサルタント倫理綱領が制定されたのです。

倫理綱領が制定される前までは「キャリア・コンサルタント行動憲章」があった

キャリアコンサルタント倫理綱領が制定される前までは、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会が2004年に制定した「キャリア・コンサルタント行動憲章」が存在しました。

キャリアコンサルティング協議会は、キャリアコンサルタントの養成等に関わる各機関からなる団体でした。
各機関においてはそれぞれキャリアコンサルタント養成講座及び能力評価試験を独自の考え方に基づいて実施し、その資格呼称も様々でした。
しかし、「キャリア・コンサルタント行動憲章」は、それらの単なる最大公約数的なものではなく、「わが国独自のキャリア・コンサルティングのあり方とは何か、プロフェッショナルとしてのキャリア・コンサルタントとはいかなる人材か」という視点から生まれたものでした。

「わが国独自のキャリア・コンサルティング」の基礎となり大きな影響を与えたのは米国のカウンセリングの考え方です。しかし、その考え方に縛られない、わが国の文化や国民性に根ざした「わが国独自のキャリア・コンサルティングの確立」を目指すために、「キャリア・コンサルタント行動憲章」が定められました。

「キャリア・コンサルタント行動憲章」では、キャリアコンサルタントのあるべき姿(行動原則)を明確化し、その上でキャリアコンサルタントが行う具体的活動と守るべき共通倫理(行動規律)を定めています。

キャリアコンサルティング協議会に加盟する団体がこのような共通の認識を持つことで、より一層キャリアコンサルティングの普及啓発を目指したのです。

出典:キャリア・コンサルタント行動憲章

倫理綱領委員 藤田真也にインタビュー

藤田真也インタビュー

今回、キャリアコンサルタント倫理綱領に関する記事を執筆するにあたり、キャリアカウンセリング協会理事長であり、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会 倫理綱領委員でもある藤田真也にインタビューしました。

Q.キャリアコンサルタントの倫理について、専門家の一人としてどのようにとらえたらよいでしょうか。

A.倫理綱領っていうのは言葉としては書かれているとおりなんですけれども、一人一人のキャリアコンサルティングの中では、もっと各論の倫理があるわけでね。それが「人間性」という言葉とものすごく結びついてるし、「高次の専門性」と結びついている。

つまり、倫理綱領自体がキャリアコンサルタント自身の中でもっと具体化され、もっと高次のレベルに進化していかなきゃいけないんですよね。

最低限の倫理というのは、自分の能力を超えて相談者に対してキャリアコンサルティングをやっちゃうと、相談者に不利益をもたらすということです。それは専門家として絶対にやっちゃいけないんですよ。だから私は、専門家の最低限のモラル、自分の能力をわきまえなさい、つまりセルフアウェアネスだよと、ずっと言い続けてるわけですね。

Q 「働く環境の変化に対応できるキャリアコンサルタントに関する報告書」には、キャリアコンサルタントに求められる資質として「高次の専門性や対人支援を行うに必要な人間性を有して職業的倫理観やダイバーシティに関する理解など」とあげられています。その他の資質に関してはどのように考えていますか?

A.これは、こういう風に理解した方がよくて。まず、相談者の属性自体が多様化しています、相談内容自体が高度化しています、複雑化しています。

キャリアコンサルティングの難易度が上がり続けてる。だから、「高次の専門性」って言葉が出てきたんですね。

ダイバーシティに関する理解は複雑化しているし、ダイバーシティをめぐる価値観を国レベルで変えなきゃってなっている。そこに向けてキャリアコンサルティングしなきゃいけないっていう、高次専門性の領域に入ってきているのね。

非常に高度なレベルのキャリアコンサルティングをやって、なおかつ相談者から信頼されて、相談ができて。その相談者の利益になるようにやっていくためには、一層高い人間性が必要だよ、(カウンセリングの基礎という)土台をもっとちゃんとしなきゃいけないよと言ってるんですよ。

Q.「対人支援を行うに必要な人間性」について、藤田さんの考える人間性について参考までに教えてください。

A.「人間性」っていうと、どんなものを兼ね備えてるって色々あると思うんですけども。

僕の一番ベースにあるのは、自分とは異なる他者の考え方や価値観を完璧に受容しなさいとは言わないけれども、認められること、尊重できること。自分とは違うから無理だっていう価値判断もしないこと。

基本的に自分と他者は全員違うんですよ。自分とちがう他者には他者の考え方、価値観があるんだと、あるいはその環境や事情があるんだということをまず認めること。できれば受け入れること。これが最低限じゃないですかね。

2つ目はですね、”相談者のために”やるんですよ。それがすごく大事。

キャリアコンサルタントのためにやるんじゃないんですよ、これが難しい(笑)
とにかく、目の前の相談者を無視して、全然見てなくて、聞いてなくて、自分の思うことばかりしゃべってる。自分の関心でその質問ばっかりしてる。それはだめですね。

どんな相談内容でどんな相談者だとしても、その人のために支援するっていうのが、非常に大事な人間性だと思いますよ。

キャリアコンサルタントの都合や考え方を優先して、相談者に関わっていくのはNGです。

だから必要なことは、3番目、セルフアウェアネスなんですね。

専門家の最低限のモラルは自分の能力をわきまえること=セルフアウェアネスだって言ったけど、もっとあるんですよね。
キャリアコンサルタントだって、受容して共感しろって言っても、イヤだって感情がわき上がることだってありますよ。人間だから。そういう風に自分は反応してるってことを自覚できることなんです。それがセルフアウェアネス。能力のことだけじゃないんです。それをロジャースは「自己一致」と言ってるわけで、GCDFでは「誠実な態度」と言っている。

今言った3つが、キャリアコンサルタントとしての人間性の一番の基底に必要だと思いますね。

それに加えて、いろんな経験を積んでるとかね、さまざまな考え方や価値観を許容できるだけのキャパシティも。それから、相談者が相談する背景に、どんなことがこの人の中にあるんだろうかと考えられること。そういうところが加わっていって、豊かな人間性になってくる。

自分とちがう他者を認める、相談者のためにやる、セルフアウェアネスという3つのスタンスに加えて、あとは豊かな経験、豊かな学識みたいなものが乗っかっていく。そうやって人間性っていうのが深まっていくんじゃないんでしょうかね。

キャリアコンサルタント倫理綱領に定められていることは?

ここからは、キャリアコンサルタント倫理綱領に定められている内容について、具体例を挙げながら解説していきます。

キャリアコンサルタントの職務と使命

キャリアコンサルタント倫理綱領の前文では、キャリアコンサルタントの職務と使命について述べられています。

キャリアコンサルタントの職務は、「労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと」です。キャリアコンサルタント倫理綱領では、この定義を実現するためにキャリアコンサルタントが遵守すべき倫理について定めています。

ここでポイントとなるのは、キャリアコンサルタントの職務は相談者の悩みや不安の解消だけではなく、職業能力の開発及び向上のために助言及び指導を行うことである点です。

相談者個人の問題解決だけにとどまらず、能力開発及び向上を支援することで、ひいては企業や社会の活力や生産性向上に寄与することを求められています。

したがってキャリアコンサルタントの使命は、「相談者のキャリア形成上の問題・課題の解決とキャリアの発達を支援し、もって組織および社会の発展に寄与すること」と明記されています。

キャリアコンサルタントとしての基本的姿勢・態度

キャリアコンサルタント倫理綱領の第1章では、キャリアコンサルタントとしての基本的姿勢・態度について述べられています。ここでは具体的な条文を挙げて解説していきます。

(信頼の保持・醸成)
第3条 3 キャリアコンサルタントは、相談者の利益をあくまでも第一義とし、研究目的や興味を優先してキャリアコンサルティングを行ってはならない

出典:「キャリアコンサルタント倫理綱領

「相談者の利益をあくまでも第一義とし」という言葉は、「キャリアコンサルタントが所属する組織のため」や「キャリアコンサルタント自身の保身や自己満足のため」にキャリアコンサルティングを行ってはいけないということを意味します。

たとえば、キャリアコンサルタントが所属する組織で、就職決定人数の目標を掲げていることもあるでしょう。その目標を達成するために、就業意識が十分高まっていない相談者に職を紹介したり、相談者の意に沿わないが決定しやすい求人の応募を促すといったことは倫理綱領に反します。

目標達成がキャリアコンサルタント自身の雇用や給与に影響する場合、そこにはジレンマが生じる可能性があります。しかし、そのジレンマに真摯に向き合い、倫理綱領に立ち戻って対処することが大切です。

職務を遂行する際の行動規範

キャリアコンサルタント倫理綱領の第2章では、職務遂行上の行動規範について述べられています。ここでも具体的な条文をいくつか挙げて解説していきます。

(任務の範囲)
第8条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、自己の専門性の範囲を自覚し、専門性の範囲を超える業務の依頼を引き受けてはならない。
 3 キャリアコンサルタントは、必要に応じて他の分野・領域の専門家の協力を求めるなど、相談者の利益のために、最大の努力をしなければならない。

出典:「キャリアコンサルタント倫理綱領

キャリアコンサルティングが普及するにつれて、キャリアコンサルタントが受ける相談は多岐に渡り、相談内容も複雑化してきています。それに伴い、キャリアコンサルタントの専門性も企業、需給調整(就職支援)、教育といった大きな分野だけではなく、障害者、外国人、医療、矯正施設、生活困窮者の自立支援など細分化されてきています。

筆者自身もキャリアコンサルティングの中で、メンタル不調について相談されることは珍しくありませんでした。大学でキャリアコンサルティングを行っていた時は、学生相談室の臨床心理士に相談したり必要に応じてリファーを行っていました。
普段から他の領域の専門家と気軽に相談したり、協力しあえる関係性を築いておくことが大切だと実感しました。

(相談者の自己決定権の尊重)
第9条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを実施するにあたり、相談者の自己決定権を尊重しなければならない。

出典:「キャリアコンサルタント倫理綱領

「相談者の自己決定権の尊重」という言葉は、キャリアコンサルタントが自分のペースで相談を進めたり、キャリアコンサルタントの価値観で判断したり助言してはいけないということを意味します。

筆者が学生の就活支援をしていた時のエピソードです。
就活が始まったばかりの頃は自己理解や仕事理解が不十分な学生も多く、そのような場合、先走って自己分析のやり方や職業に関する情報収集方法をアドバイスしてしまうことがありました。しかし、その時はアドバイスを喜んでくれても実際には行動に移せておらず、また同じような相談をしてくる学生がいました。

本来、自分で納得して決断したことであれば、人は自ら行動することができるものです。自身の対応をとても反省したことを覚えています。

(組織との関係)
第 11 条 組織との契約関係にあるキャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、相談者に対する支援だけでは解決できない環境の問題や、相談者の利益を損なう問題等を発見した場合には、相談者の了解を得て、組織への問題の報告・指摘・改善提案等の環境への働きかけに努めなければならない。

出典:「キャリアコンサルタント倫理綱領

たとえば、在宅勤務の推進により新入社員や中途採用者が職場に適応できずに困っているという相談を受けた場合、現場レベルの問題だと判断して相談者に対する支援だけを行うのでは不十分です。
キャリアコンサルタントは組織の活力や生産性向上に寄与することも求められています。相談者の了解を得て、組織への報告・指摘・改善提案を行う必要があります。

「キャリアコンサルタントとしての倫理と姿勢」は国家試験の出題範囲

勉強する女性

「キャリアコンサルタントとしての倫理と姿勢」は国家資格キャリアコンサルタント試験の学科試験の出題範囲に含まれています。

「キャリアコンサルタント試験の試験科目及びその範囲並びにその細目」では、(1)活動範囲・限界の理解、(2)守秘義務の遵守、(3)倫理規定の厳守、(4)キャリアコンサルタントとしての姿勢 について記載されています。

キャリアコンサルタント試験の受験者は、試験対策としてもキャリアコンサルタント倫理綱領を学ぶことが必要です。キャリアコンサルタント試験のこれまでの出題傾向を調べると、必ず倫理綱領からの設問が含まれています。いずれもキャリアコンサルタント倫理綱領をしっかり理解していれば対応できる内容です。

出典:国家資格 キャリアコンサルタント試験「キャリアコンサルタント試験の試験科目及びその範囲並びにその細目

過去問題をチェックして国家試験にそなえよう

ここからは国家資格キャリアコンサルタント試験の過去問題を基に、キャリアコンサルタント倫理綱領に関してどのような内容が出題されているのか確認していきます。

第22回キャリアコンサルタント試験の問50は、キャリアコンサルタントの自己研鑽に関する設問です。受験者は選択肢としてあげられている4つの文章の中から、適切なものを1つ選択するという形式です。

選択肢には「更新講習は更新を行う直前の1年間に集中して受講する方が良い」「キャリアコンサルタントは更新講習を受講するだけで十分活躍できる」「キャリアコンサルティングを適切に実施するには多職種連携に関する知識も必要」といった主旨の文章があります。これは、キャリアコンサルタント倫理綱領の第4条 自己研鑽を理解していれば自信をもって解答できる内容です。

以下に、キャリアコンサルタント倫理綱領第4条を引用します。

(自己研鑽)
第4条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングに関する知識・技能を深める、上位者からの指導を受けるなど、常に資質向上に向けて絶えざる自己研鑚に努めなければならない。
2キャリアコンサルタントは、組織を取り巻く社会、経済、環境の動向や、教育、生活の場にも常に関心をはらい、専門家としての専門性の維持向上に努めなければならない。
3キャリアコンサルタントは、より質の高いキャリアコンサルティングの実現に向け、他の専門家とのネットワークの構築に努めなければならない。

出典:「キャリアコンサルタント倫理綱領

キャリアコンサルタントは、更新を行う直前だけではなく「常に」「絶えざる」自己研鑽に務めなければならないとされており、更新講習だけではなく社会動向や生活の場にも関心をはらうことが大切とされています。また、キャリアコンサルタントのネットワークだけではなく、他の専門家とも連携する必要があります。

もう1つ例を挙げましょう。
第21回キャリアコンサルタント試験の問50は、キャリアコンサルタントとしての姿勢に関する設問です。受験者は選択肢としてあげられている4つの文章の中から、最も不適切なものを1つ選択するという形式です。

選択肢には「キャリアコンサルタントの態度がクライエントへ与える影響は軽いので、その点は考慮せず面談をするのが良い」といった主旨の文章があります。これは、常識的に考えても判断できる内容ですが、キャリアコンサルタント倫理綱領の第1条 基本的理念、第3条 信頼の保持・醸成を理解していれば迷わず解答できるでしょう。

以下に、キャリアコンサルタント倫理綱領第1条、第3条を引用します。

(基本的理念)
第1条 2 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングが、相談者の生涯にわたる充実したキャリア形成に影響を与えることを自覚して誠実に職務を遂行しなければならない。

(信頼の保持・醸成)
第3条 キャリアコンサルタントは、常に公正な態度をもって職務を行い、専門家としての信頼を保持しなければならない。

出典:「キャリアコンサルタント倫理綱領

キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングが相談者に大きな影響を与えることを自覚し、誠実で公正な態度をもって職務にあたることが大切です。

出典:国家資格 キャリアコンサルタント試験「過去問題

専門家としての倫理観を高めながらキャリアコンサルタントをめざす

グループワークのシーン

キャリアコンサルタントの養成講習であるGCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムでは、キャリアコンサルタント倫理綱領をさらに具体的なケースで学び、専門家としての倫理について理解を深めることができます。ここからはその一端を紹介します。

GCDFでは、個人のキャリア発達支援にかかわる専門家の倫理基準を学べる

GCDF-Japanは個人のキャリア発達支援に携わる専門家であり、専門家としての任務範囲や倫理基準を遵守する責任があります。

GCDF-Japanの倫理基準は、GCDFの任務範囲、基本倫理、クライアントおよび雇用主とGCDFの関係、コンサルテーションについて定めています。ここでは「プライバシーと秘密の遵守」、「二重関係(多重関係)の禁止」、「コンサルテーション」、「任務範囲の認識」について取り上げます。

【関連ページ】
講座カリキュラムと料金

キャリアコンサルタント養成講習GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム

プライバシーと秘密の遵守

プライバシーと秘密の遵守とは、GCDFが職務上知り得たクライアントの秘密は外部に漏らしてはならないという規定で、「守秘義務」と表現されることもあります。これが守られないと、クライアントは秘密の漏洩を警戒して、安心して相談できなくなってしまいます。

二重関係(多重関係)の禁止

二重関係(多重関係)の禁止とは、GCDFとクライアントが、キャリアカウンセリングを行う関係以上の関係にあることを「二重関係(または多重関係)」が生じているといい、これを禁止しています。

コンサルテーション

コンサルテーションとは、クライアントの問題が自分の能力や職務範囲を超えている場合、または、事後にGCDFがクライアントに対して行った行為が適切であったかどうか確認したい場合、専門家に教えを請うことです。

任務範囲

任務範囲とは、「能力としてできること」(訓練範囲)と「してよいこと」(GCDFのコンピテンシーや職場での役割)の両方を満たしていることを意味します。

出典:『GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム テキストブック2』株式会社リクルートマネジメントソリューションズ、2020年、p.132-135より引用                              

【関連ページ】
求められるコンピテンシー

倫理基準には前提の「5原則」がある

倫理基準は、一般的に受け入れられている道徳基準に基づいています。キャリアカウンセリングを行う際、定められた倫理基準での判断が難しい場合、GCDFは倫理基準の前提となる5原則に戻って考える必要があります。

倫理基準の前提となる5原則

第1 Do no harm「傷つけない」
  クライアントを傷つける恐れのあることを回避する。

第2 Do good「助ける」
  クライアントにとって良いこと、役立つことを行う。

第3 Autonomy「自立」
  クライアントの意思を尊重し、GCDFの考えを押し付けない。

第4 Justice「公平」
  あらゆるクライアントに本質的に公平な措置を行う。

第5 Fidelity「真剣に向き合う」
  クライアントに対して、誠実に責任感をもってかかわり、信頼できる存在となる。

出典:『GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム テキストブック2』株式会社リクルートマネジメントソリューションズ、2020年、p.131-132より引用

倫理的問題でジレンマを抱えた場合の意思決定プロセスも学べる

倫理基準について学習していても、上司や同僚との関係、クライアントからの要望、任務範囲の制限などの狭間におかれ、倫理基準に照らしても簡単には判断できないようなケースがたくさんあります。

GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムでは、このようにジレンマを抱えた場合の対処の指針や意思決定プロセスについても学ぶことができます。倫理的問題やジレンマを抱えた時に応用できる、意思決定するまでの考え方の枠組みを与えてくれるものが、「ジレンマへの意思決定における5ステップ・プロセス」です。

ジレンマへの意思決定における5ステップ・プロセス

STEP1 ジレンマに気づき、問題を特定する
STEP2 文書を参照する
STEP3 選択肢を評価する
STEP4 自分の感情を振り返る
STEP5 実行とフォローアップ

出典:『GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム テキストブック2』株式会社リクルートマネジメントソリューションズ、2020年、p.136-138より引用

キャリアコンサルタント倫理綱領についてのまとめ

キャリアコンサルタント倫理綱領についてまとめました。

  1. キャリアコンサルタント倫理綱領は、キャリアコンサルタントが自らを律する「基本的姿勢・態度」と相談者等との関係で遵守すべき「職務遂行上の行動規範」を示している
  2. 2016年にキャリアコンサルタントの国家資格化・登録制度の創設が行われたことを背景に、現在のキャリアコンサルタント倫理綱領が制定された
  3. キャリアコンサルタント倫理綱領の内容は、国家資格キャリアコンサルタント試験の出題範囲である
  4. GCDFでは専門家としての倫理観を高めながら、キャリアコンサルタントを目指せる