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傾聴するシーン

「傾聴」と聞いて、あなたはどのようなシーンや話の聞き方を想像しますか?

家族と、上司や同僚、部下と、友人などと、話を聞いているときの自分は、どのような姿勢で、どのようなことを考えながら聞いているのか、また、話を聞いた上でどのような言葉で応答しているのか。

日頃、聞くことについてじっくり考える機会はなかなかないかもしれません。

今回は、諸富祥彦『カール・ロジャーズ カウンセリングの原点』とキャリアコンサルタント養成講習「GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム」のテキストをもとに、傾聴について取り上げます。

この記事を読むと、傾聴とはどのようなあり方で体現できているものなのか、また傾聴スキルを習得するためにどのような方法で勉強すべきかどうか、わかることでしょう。

傾聴とは?

まずは国語辞典を使って、「傾聴」の言葉の意味と、傾聴に近い言葉との違いについて調べました。

一般的な「話を聞く」と「傾聴」の違い

「傾聴」を国語辞典で調べると、下記のように書かれています。

けい-ちょう【傾聴】

聞きもらすまいとして熱心に聞くこと。

出典:三省堂『新明解国語辞典 第七版』

ただ「聞く」のとは異なり、「聞きもらさず」かつ「熱心に」聞くこととあります。

「熱心に聞くこと」の「熱心」についても意味を調べますと、

ねっしん【熱心】

一つの物事に興味・関心があって、他に心を動かされない様子だ。 

出典:三省堂『新明解国語辞典 第七版』

相手の話や相手そのものに興味・関心があり、たとえ周囲に気になりそうなものがあったとしてもそれには心を動かされず、集中して話を聴くシーンが思い浮かぶと思います。

「聞く」と「聴く」の違い

話を「聞く」のと「聴く」のでは、どのように意味が異なるのかについても調べました。

き・く【聞く】

①音や声を耳で感じる(知る)。
②聞いた内容を理解して、それに応じる
③尋ねる。問う。
④酒の味や香のにおいのいい悪いをためしてみる。
表記:②は「聴く」、③は「訊く」とも書く

出典:三省堂『新明解国語辞典 第七版』

②では「聞いた内容を理解して」とあります。

「理解」についても一応意味を調べてみますと、

り-かい【理解】

物事に接して、それが何であるか(を意味するか)正しく判断すること。

出典:三省堂『新明解国語辞典 第七版』

同じ「きく」という言葉であっても、「耳で感じる」という意味の「聞く」と、「聞いた内容を何であるか(意味するか)を正しく判断し、応じる」という意味の「聴く」とでは、話の捉え方が異なることがわかります。

傾聴が行われるシーンとは

傾聴は、相手が心の悩みを打ち明けたいとき、カウンセラーはもちろんのこと、専門家でなくとも、家族、パートナー、友人、同僚、部下、医師、看護師、教師など、さまざまな立場の人が行うことがあります。安心して話ができるように静かな環境で行われることが想像できると思います。

傾聴がもたらす効果

笑顔で話すシーン

傾聴によって、話し手に期待される効果は3つ考えられます。

信頼関係ができる

傾聴されることで、話し相手は信頼され、尊重されていると実感できるでしょう。
いくら聞き役がテクニカルスキルに長けていたとしても、信頼関係がなければ、相談を進めることは困難です。

気持ちを落ちつけられる

話し手は、聞き手が話を理解しようとしてくれるのを感じ、安心感を抱くことができます。また、話をしながらありのままの自分を受け入れてもらえていると感じると、孤独感や不安が和らぎ、冷静になることができるでしょう。

自己理解や気づきにつながる

安心して悩みを打ち明けられることで、自分自身についてわかっていなかったり、気づいていなかったりすることに気づき、問題解決に向かって進むことが期待できます。

心理学者カール・ロジャーズが表現した、聴く側の3つの側面

カウンセリングルーム

心理学者のカール・ロジャーズは、人が真に自分らしく生きるためには、社会や周囲の期待に応えている姿ではなく、ほんとうの自分自身であることを許してくれ、ほんとうの自分自身で生きることを可能にする「誰か」との関係が必要だと考えました。
「誰か」とは、つまり、深く話を聴いてくれる人のことを指します。

ロジャーズは、セラピストが「深い、ほんものの傾聴*」を体現できているときの自らのあり方には、3つの側面があると表現しました。(3つの側面を実現できれば、傾聴ができるようになるという意味ではない。あり方を、ある側面から見れば共感し、ある側面から見れば受容し、またある側面で見ると一致しているということである)

ここでは諸富祥彦『カール・ロジャーズ カウンセリングの原点』から引用しながら、3つの側面について触れます。

*深い、ほんものの傾聴・・・『カール・ロジャーズ カウンセリングの原点』によると「クライアントが、自己と経験の、内側のもっとも深いところを探求していく、その同行者となること」を指す。

共感的理解 (empathy, empathic understanding)

『カール・ロジャーズ カウンセリングの原点』では、共感的理解は重要であるとし、以下のように説明されています。

共感的に理解される、というのは、話をしている側から見れば、自分の語ろうとしていることを、自分自身の内側から、自分と同じように理解してもらえている、ということである。(中略)
よりリアルに言えば、その人の「内側の視点」に立ち、その人になりきったかのような姿勢で、一つに溶けあい、一体化して、その人の体験を共に体験していくことである。それは、ただ「そうですよね」と同意したり同感したりするのとは異なる。
「こういうことだろうか」「それともこういうことだろうか」と、ありありと推測し想像しながら、相手が言わんとしていること、そこに表現されていることのエッセンスをつかんで相手に伝え、確かめていく。そんなていねいな作業の積み重ねである。

出典:諸富祥彦『カール・ロジャーズ カウンセリングの原点』角川選書、2021年、p20-21より引用

無条件の肯定的関心 (unconditional positive regard)

『カール・ロジャーズ カウンセリングの原点』では、無条件の肯定的関心について以下のように説明されています。

誰か、たった一人でいいから、その人をただそのまま受け止めてくれる(無条件の受容)関係性を与えられた時に、人は、内面的に自由になっていく。このような変化をロジャーズは目の当たりにした。 クライアントが何を思い、どのように語ってもただそのまま受け止めてもらえる関係において、「このように考え振る舞わないといけない」「そうしないとやっていけない」といった「承認の条件」へのとらわれは徐々に緩んでいく。自らの内臓感覚に従って、自由にものを考えたり感じたりすることができるようになっていく。 受容とは、迷える人に「あなたはそのままでいい」と肯定することではない。むしろどのようにあればいいかわからない、迷いを抱えたクライアントを、ただそのまま受け止めていく姿勢のことである。自分がどのようなことをどのように語っても、ただそのまま受け止めてもらえる関係の中で、人は、承認の条件から解放され、自由になることができる。

出典:諸富祥彦『カール・ロジャーズ カウンセリングの原点』角川選書、2021年、p20より引用

自己一致 (congruence)

「一致」「自己一致」とも呼ばれる3つ目の側面については、以下のように説明されています。

「一致」とは、話を聴いている人自身が、自分の内臓感覚にダイレクトにアクセスし、そこでものを考え、生きていることである。そうした在り方をみずから体現していることである。相手の話を聴く時にも、自分の内臓感覚知に立ち戻り、それを通して相手の話を聴き理解することである。

出典:諸富祥彦『カール・ロジャーズ カウンセリングの原点』角川選書、2021、p21より引用

キャリアコンサルティングにおける「聞く力」と「傾聴技法」

キャリア=人生に関する相談の専門家、キャリアコンサルタント。
キャリアコンサルタントは、相談者の意思決定や行動をサポートする立場であり、カウンセリングスキルは必須です。

ここでは、キャリアコンサルタントの「聞く力」と「傾聴技法」について、GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムのテキストを使って説明します。

カウンセリングを進めるための基礎的能力「聴く力」とは

GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムでは、聴く力をカウンセリングを進めるための基礎的な能力のうちのひとつとして学びます。

「聴く力」について、テキストでは以下のように説明されています。

聴く力とは、クライアントが言いたいこと、言おうとしたことを聴き、「言わんとしていること」を理解していくことです。クライアントの発する言葉には必ず意味があります。たとえ同じような言葉でも、クライアントが違えば、異なる意味で使っていたり、そこに何らかの気持ちを込めていたりします。カウンセラーができることは、クライアントは「何について」「どのようなことを伝えたいのか」を理解しようとすること、そして「わかったこと」をカウンセラーの言葉で「話し、伝えること」です。

出典:『GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム テキストブック1』株式会社リクルートマネジメントソリューションズ、2020年、p.40より引用

カウンセリングスキルの「傾聴技法」とは

「傾聴技法」は、アメリカの心理学者アレン・アイビィによって提唱されたマイクロカウンセリング*のうちの一つの要素で、「かかわり技法」とも呼ばれます。
*マイクロカウンセリング・・・“個人尊重”の人間観を背景にしたカウンセラーに共通するスキル、すなわち「カウンセリングの姿勢、技法で「トレーニングの姿勢、技法」のこと。

アイビィは、会話は「かかわり的なもの」「積極的な行動を促しているもの」「それを駆使しての面接の統合」で構成されていると示し、それらの形を「技法」と名付けて階層表としてかかわり行動を根幹において図式化しました。大別すると「かかわり技法」「積極技法」「技法の統合」です。

(中略)

1.かかわり技法
カウンセラーのリード・方向付けが少ない「かかわり行動」(文化的に適合した視線の位置、言語追跡、身体言語、声の質等の非言語的コミュニケーション)および、「かかわり技法」です。「かかわり技法」には「質問(開かれた質問、閉ざされた質問)」「話すことを促す励まし」「発言の要約」「言い換え」「表現される感情の要約(感情の反映)」などがあります。
「質問」以下「感情の反映」までの「かかわり技法」に属する諸技法を合わせて「基本的傾聴技法」、略して「傾聴技法」とも呼びます。

出典:『GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム テキストブック1』株式会社リクルートマネジメントソリューションズ、2020年、p.82より引用

GCDFでの学び方

GCDFでは、クライアント(相談者)が安心、信頼して相談ができるための関係を構築するための傾聴技法を学びます。

実際には、受講者や「クライアント役」と呼ばれる相談者を演じる人とペアになり、実習を行いますが、ここでは傾聴技法の4つのスキルについてGCDFのテキストより引用してご説明します。

明確化

「明確化」の文字どおりあいまいなメッセージを「明らかにし」、カウンセラーの理解をクライアントに確認する方法です。
一つは、カウンセラーがクライアントを理解しようとする際に、そのメッセージの不明な部分を「明確」にすることです。もう一つは、クライアント自身の不明瞭な気持ちや考えを「明確化」するカウンセラーの支援があげられます。

出典:『GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム テキストブック1』株式会社リクルートマネジメントソリューションズ、2020年、p.68-73より引用

感情反映

カウンセラーがカウンセリング面接を行う際、クライアントの感情に注意を払うことが必要です。そのことが「自分の気持ちをわかってもらった」という、クライアントの大きな心の支えとなると同時に、現実的な問題解決の第一歩につながります。
それゆえに、カウンセラーはクライアントの感情を正しく理解し、さらに理解した内容をクライアントに自分の言葉で伝えるという技法に「熟達する必要」があります。

出典:『GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム テキストブック1』株式会社リクルートマネジメントソリューションズ、2020年、p.68-73より引用

言い換え

感情反映はクライアントの感情に焦点をあてますが、クライアントの経験や出来事、思考や行動といった感情以外の事柄については、「言い換え」という技法が使われます。容観的事実、情報をできるだけ多く正確に把握することは、クライアントの理解、支援に不可欠なことはいうまでもありません。また、認知行動理論によるとクライアントの考えや認識は感情に大きな影響を与えますから、カウンセラーはクライアントの思考も含めて、クライアントを幅広く巨視的な立場から理解することが要求されます。

出典:『GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム テキストブック1』株式会社リクルートマネジメントソリューションズ、2020年、p.68-73より引用

要約

要約は、クライアントが(1)複雑な内容について話した場合、(2)感情、思考、意思、出来事等、複数の内容を同時に発言した場合、そして(3)不明確またはあいまいな情報をコミュニケートした場合、に利用されるスキルです。

出典:『GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム テキストブック1』株式会社リクルートマネジメントソリューションズ、2020年、p.68-73より引用

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傾聴スキルを学ぶには

傾聴とは聞き手はどのようなあり方でいるのか、どのような技法を活用して聴いているのかを理解でき、早速自分でも実践したいと思った方もいらっしゃることでしょう。

ところが、傾聴を実践するのは簡単なことではありません。

話し相手のいない状態、つまり独学で習得することはきわめて困難ですし、どなたか話し相手がいたとしても「聞く練習です」といって練習するのもシチュエーションが不自然で、なかなか練習機会を設けづらいでしょう。

キャリアコンサルタント養成講習「GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム」では、受講者同士や、クライアント役と呼ばれる相談者を演じる人との間で傾聴の練習を行います。

プログラムの受講者全員が傾聴スキルを身につけるために「話を聞く」練習をする場ですので、何度も失敗しながら、少しずつ傾聴スキルを身につけることができます。

キャリアコンサルタント養成講習での体験談

筆者自身、キャリアカウンセラーを目指してGCDFの受講をはじめたものの、当初は相談者を演じたり、聞き手として応答したりするのが初めての体験であり、緊張と居心地の悪さを感じていました。

聴く練習には、失敗がつきものです。
一生懸命聞いているつもりなのに、相談者役が浮かばれない表情に変化したり、沈黙してしまったりすることもあります。相談されているのに話が進まず、聞き手の自分がたくさん話してしまって、かえって相談者役との心の距離が遠ざかったこともあります。

当初は、ロールプレイングを聞いてくださっていた先生が「あともう少し!」と笑顔で励ましてくださったのに対して、何ができていて何がもう少しなのかもわからなかったりしました。試行錯誤しながら練習の回数を重ねていくうちに、「聴く」とはどういう状態のことなのか、本当に少しずつわかっていくような感覚に変化していきました。

資格を取得してから長い時間が経ちましたが、学びに終わりはありません。現在も、キャリアコンサルタント更新講習や協会内の勉強会などで聴く練習を続けています。

キャリアコンサルタント養成講習GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム

まとめ

最後に、傾聴についてまとめました。

  1. 傾聴とは「聞きもらすまいとして熱心に聞くこと」
  2. 聞くは「耳で感じる(知る)」、聴くは「聞いた内容を何であるかを正しく判断し、応じる」
  3. 傾聴は、信頼関係構築や気持ちの落ち着き、気づきなどの効果をもたらす
  4. ロジャーズは、深い、ほんものの傾聴ができているときには3つの側面があると表現
  5. 傾聴技法の要素としては、4つのスキルが挙げられる
  6. 「聴く力」を身につけるには、キャリアコンサルタント養成講習などの聴くに特化した環境での練習が必要