キャリアコンサルタント養成講習 GCDF-Japan
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「傾聴」と聞いて、あなたはどのようなシーンや話の聞き方を想像しますか?
家族と、上司や同僚、部下と、友人などと、話を聞いているときの自分は、どのような姿勢で、どのようなことを考えながら聞いているのか、また、話を聞いた上でどのような言葉で応答しているのか。
日頃、聞くことについてじっくり考える機会はなかなかないかもしれません。
今回は、諸富祥彦『カール・ロジャーズ カウンセリングの原点』とキャリアコンサルタント養成講習「GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム」のテキストをもとに、傾聴について取り上げます。
この記事を読むと、傾聴とはどのようなあり方で体現できているものなのか、また傾聴スキルを習得するためにどのような方法で勉強すべきかどうか、わかることでしょう。
傾聴とは?
まずは国語辞典を使って、「傾聴」の言葉の意味と、傾聴に近い言葉との違いについて調べました。
一般的な「話を聞く」と「傾聴」の違い
「傾聴」を国語辞典で調べると、下記のように書かれています。
ただ「聞く」のとは異なり、「聞きもらさず」かつ「熱心に」聞くこととあります。
「熱心に聞くこと」の「熱心」についても意味を調べますと、
相手の話や相手そのものに興味・関心があり、たとえ周囲に気になりそうなものがあったとしてもそれには心を動かされず、集中して話を聴くシーンが思い浮かぶと思います。
「聞く」と「聴く」の違い
話を「聞く」のと「聴く」のでは、どのように意味が異なるのかについても調べました。
②では「聞いた内容を理解して」とあります。
「理解」についても一応意味を調べてみますと、
同じ「きく」という言葉であっても、「耳で感じる」という意味の「聞く」と、「聞いた内容を何であるか(意味するか)を正しく判断し、応じる」という意味の「聴く」とでは、話の捉え方が異なることがわかります。
傾聴が行われるシーンとは
傾聴は、相手が心の悩みを打ち明けたいとき、カウンセラーはもちろんのこと、専門家でなくとも、家族、パートナー、友人、同僚、部下、医師、看護師、教師など、さまざまな立場の人が行うことがあります。安心して話ができるように静かな環境で行われることが想像できると思います。
傾聴がもたらす効果
傾聴によって、話し手に期待される効果は3つ考えられます。
信頼関係ができる
傾聴されることで、話し相手は信頼され、尊重されていると実感できるでしょう。
いくら聞き役がテクニカルスキルに長けていたとしても、信頼関係がなければ、相談を進めることは困難です。
気持ちを落ちつけられる
話し手は、聞き手が話を理解しようとしてくれるのを感じ、安心感を抱くことができます。また、話をしながらありのままの自分を受け入れてもらえていると感じると、孤独感や不安が和らぎ、冷静になることができるでしょう。
自己理解や気づきにつながる
安心して悩みを打ち明けられることで、自分自身についてわかっていなかったり、気づいていなかったりすることに気づき、問題解決に向かって進むことが期待できます。
心理学者カール・ロジャーズが表現した、聴く側の3つの側面
心理学者のカール・ロジャーズは、人が真に自分らしく生きるためには、社会や周囲の期待に応えている姿ではなく、ほんとうの自分自身であることを許してくれ、ほんとうの自分自身で生きることを可能にする「誰か」との関係が必要だと考えました。
「誰か」とは、つまり、深く話を聴いてくれる人のことを指します。
ロジャーズは、セラピストが「深い、ほんものの傾聴*」を体現できているときの自らのあり方には、3つの側面があると表現しました。(3つの側面を実現できれば、傾聴ができるようになるという意味ではない。あり方を、ある側面から見れば共感し、ある側面から見れば受容し、またある側面で見ると一致しているということである)
ここでは諸富祥彦『カール・ロジャーズ カウンセリングの原点』から引用しながら、3つの側面について触れます。
*深い、ほんものの傾聴・・・『カール・ロジャーズ カウンセリングの原点』によると「クライアントが、自己と経験の、内側のもっとも深いところを探求していく、その同行者となること」を指す。
共感的理解 (empathy, empathic understanding)
『カール・ロジャーズ カウンセリングの原点』では、共感的理解は重要であるとし、以下のように説明されています。
無条件の肯定的関心 (unconditional positive regard)
『カール・ロジャーズ カウンセリングの原点』では、無条件の肯定的関心について以下のように説明されています。
自己一致 (congruence)
「一致」「自己一致」とも呼ばれる3つ目の側面については、以下のように説明されています。
キャリアコンサルティングにおける「聞く力」と「傾聴技法」
キャリア=人生に関する相談の専門家、キャリアコンサルタント。
キャリアコンサルタントは、相談者の意思決定や行動をサポートする立場であり、カウンセリングスキルは必須です。
ここでは、キャリアコンサルタントの「聞く力」と「傾聴技法」について、GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムのテキストを使って説明します。
カウンセリングを進めるための基礎的能力「聴く力」とは
GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムでは、聴く力をカウンセリングを進めるための基礎的な能力のうちのひとつとして学びます。
「聴く力」について、テキストでは以下のように説明されています。
カウンセリングスキルの「傾聴技法」とは
「傾聴技法」は、アメリカの心理学者アレン・アイビィによって提唱されたマイクロカウンセリング*のうちの一つの要素で、「かかわり技法」とも呼ばれます。
*マイクロカウンセリング・・・“個人尊重”の人間観を背景にしたカウンセラーに共通するスキル、すなわち「カウンセリングの姿勢、技法で「トレーニングの姿勢、技法」のこと。
GCDFでの学び方
GCDFでは、クライアント(相談者)が安心、信頼して相談ができるための関係を構築するための傾聴技法を学びます。
実際には、受講者や「クライアント役」と呼ばれる相談者を演じる人とペアになり、実習を行いますが、ここでは傾聴技法の4つのスキルについてGCDFのテキストより引用してご説明します。
明確化
感情反映
言い換え
要約
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傾聴スキルを学ぶには
傾聴とは聞き手はどのようなあり方でいるのか、どのような技法を活用して聴いているのかを理解でき、早速自分でも実践したいと思った方もいらっしゃることでしょう。
ところが、傾聴を実践するのは簡単なことではありません。
話し相手のいない状態、つまり独学で習得することはきわめて困難ですし、どなたか話し相手がいたとしても「聞く練習です」といって練習するのもシチュエーションが不自然で、なかなか練習機会を設けづらいでしょう。
キャリアコンサルタント養成講習「GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム」では、受講者同士や、クライアント役と呼ばれる相談者を演じる人との間で傾聴の練習を行います。
プログラムの受講者全員が傾聴スキルを身につけるために「話を聞く」練習をする場ですので、何度も失敗しながら、少しずつ傾聴スキルを身につけることができます。
キャリアコンサルタント養成講習での体験談
筆者自身、キャリアカウンセラーを目指してGCDFの受講をはじめたものの、当初は相談者を演じたり、聞き手として応答したりするのが初めての体験であり、緊張と居心地の悪さを感じていました。
聴く練習には、失敗がつきものです。
一生懸命聞いているつもりなのに、相談者役が浮かばれない表情に変化したり、沈黙してしまったりすることもあります。相談されているのに話が進まず、聞き手の自分がたくさん話してしまって、かえって相談者役との心の距離が遠ざかったこともあります。
当初は、ロールプレイングを聞いてくださっていた先生が「あともう少し!」と笑顔で励ましてくださったのに対して、何ができていて何がもう少しなのかもわからなかったりしました。試行錯誤しながら練習の回数を重ねていくうちに、「聴く」とはどういう状態のことなのか、本当に少しずつわかっていくような感覚に変化していきました。
資格を取得してから長い時間が経ちましたが、学びに終わりはありません。現在も、キャリアコンサルタント更新講習や協会内の勉強会などで聴く練習を続けています。
まとめ
最後に、傾聴についてまとめました。
- 傾聴とは「聞きもらすまいとして熱心に聞くこと」
- 聞くは「耳で感じる(知る)」、聴くは「聞いた内容を何であるかを正しく判断し、応じる」
- 傾聴は、信頼関係構築や気持ちの落ち着き、気づきなどの効果をもたらす
- ロジャーズは、深い、ほんものの傾聴ができているときには3つの側面があると表現
- 傾聴技法の要素としては、4つのスキルが挙げられる
- 「聴く力」を身につけるには、キャリアコンサルタント養成講習などの聴くに特化した環境での練習が必要