キャリアコンサルタント養成講習 GCDF-Japan
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日本の「キャリアカウンセリング」の歴史は「職業相談」と呼ばれた時期を含めると70年以上に及び、世界の中でも長いほうに属するそうです。
企業の間で急速に広まったのは1980年代後半、バブル経済の崩壊以降のこと。1990年代にはいると、高校や大学などの教育機関、さらには行政機関にまで広がり「キャリアカウンセリング」はブームと呼ばれる状況になります。
「キャリア」と「カウンセラー」という言葉はそれぞれが、専門的職業としてアメリカで発展した「キャリアカウンセラー」よりもはるか以前に日本に紹介された外来語で、言葉のイメージも様々に使われてきたことで「キャリアカウンセラーって何をする人なの?」という混乱も生まれました。
ここでは「GCDF-Japanキャリアカウンセラー」と「国家資格キャリアコンサルタント」のダブルライセンスでキャリア支援活動を行っている筆者が、キャリアカウンセラーについてご紹介します。
キャリアカウンセラーとは?
キャリアカウンセラーは、カウンセラーと言う職業の中で「クライエントのキャリアの問題に焦点をあてて専門的に援助する職務」と言えるのですが、日本では実態として様々な「キャリアカウンセラーの資格」が存在し、「キャリアカウンセラーは職業」であるという見方が主流です。
また、「キャリアカウンセラー」は「キャリアコンサルタント」とほぼ同義として扱われる場面がほとんどです。
2020年に厚生労働省が開設した職業情報提供サイト(日本版O-NET)(愛称:job tag(じょぶたぐ))でも、「キャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント」は併記され下記の説明がなされています。
日本のキャリア支援の呼称を「キャリアカウンセリング」でなく「キャリアコンサルティング」としたことは、2002年に厚生労働省が公表した「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」報告書に現れます。
5年間で5万人のキャリアコンサルタントを養成する計画と、キャリアコンサルタントの能力要件が、官民合同の「キャリア・コンサルティング研究会報告書」として公表されたのも2002年のことです。これを受けて、厚労省から認定を受けた民間機関が行うキャリアコンサルタントの育成・能力評価試験を従業員に受けさせる事業主に対してキャリア形成促進助成金を支給すること等が始まり、キャリアコンサルタントの育成・能力評価が奨励されていきました。
急激な産業構造と社会・経済の変動のなかで、価値観の変化とともに日本特有の雇用慣行が揺らぎ、職業問題が新たに社会問題化したことでキャリアカウンセリングへの関心が大きく高まりを見せていた20世紀末。
キャリア支援者の養成や認定事業に多くの民間団体等が参入していたわけですが、2002年に厚生労働大臣が認定した標準レベルキャリアコンサルタント能力評価試験の試験名称を見ても、「キャリアカウンセラー」、「キャリアコンサルタント」、「CDA(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)」、「GCDF-Japan(グローバル・キャリア・ディベロップメント・ファシリテーター)」など発行資格名称・発行基準・資格取得対象者は各団体により様々でした。
出典:リクルートワークス研究所 Works 64 企業内プロフェッショナルの時代(2004年6月)「キャリアカウンセラーが創り出す未来」
「GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム」は、2001年から日本で開始されました。日本に先行して「キャリアカウンセラー」・「カウンセリング心理学」が発展したアメリカを母国とした「キャリア支援の実務家」養成のためのカリキュラムが特長で、現在は厚生労働大臣認定キャリアコンサルタント養成講習でもあります。GCDFは、専門家である「キャリアカウンセラー」としてのアイデンティティを大切にしています。
GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムのテキストには、アメリカでキャリアカウンセラーとしての専門的教育を受けた、カウンセリング心理学の第一人者である筑波大学渡辺三枝子先生から下記の序文が寄せられています。
キャリアカウンセラーが扱うクライアントの問題は、「職業」だけにとどまらず、「生き方(ライフスタイル)」そのものを扱います。
「環境との相互作用のなかに生きる存在」であるクライアントが、環境の中でその人なりに最高に機能できる自発的で独立した人となるための援助活動をとおして、個人のニーズと環境(組織)のニーズの最善なブレンドを目指す多様なはたらきかけを行うキャリアカウンセラーは、「チェンジ・エージェント(変革の代理人)」とも呼ばれます。
キャリアカウンセリングとは
この記事をご覧になっている方は、個人を支援することに関心があるのではないかと思います。また、普通の「カウンセリング」と「キャリアカウンセリング」は何が違うのか?身近な人に仕事やキャリアについて相談することと、専門家のキャリアカウンセリングを受けることは何が違うのか?にも、関心をお持ちではないかと思います。
キャリアカウンセリングの定義は決して一つではありません。時代背景を受けて変化してきましたし、国や文化が違えば、キャリアカウンセリングの具体的なイメージや目標は異なります。
GCDF-Japanでのキャリアカウンセリングの定義は、下記の通りです。
*キャリア・ディベロップメント・・・「キャリア発達」はアメリカで発展した発達心理学・社会心理学・パーソナリティ心理学などをはじめとする心理学の基礎的理論の上に構築されたキャリアカウンセリングの基盤となる考え方のことを指します。「個々の人が生涯にわたって遂行する様々な立場や役割の中で、自己と働くことを関係付け、意味付けながら、自分の知的・身体的能力や情緒的な特徴、価値観などを一人一人の生き方として統合していくプロセス」
出典:岡田昌毅「研究アラカルト キャリア発達とキャリア・カウンセリング」、 2014年より引用
筆者は、自身が受講したGCDF-Japanの授業初日にこの言葉を聞いてドキッとしました。
というのも、筆者は、当時、人材サービス事業会社に勤務していて人事教育畑の職務経験もあったので、「カウンセリングの基本的な知識を付加すれば資格がとれるのであろう、資格をとったら仕事の幅や深みが増すのではないか、臨床心理士ほど専門的なカウンセリングをするのでないだろうけど」と思い違いをしていたからです。
職業は、個人の生活全般と複雑に絡み合い、全生活とその人の存在そのものに大きな影響を与えます。時には精神疾患の原因にさえなります。また、個人の職業生活は、職場や組織、産業界、経済界、政界の動きという大きな波をまともに受けるもので、個人の意思だけではいかんともしがたい状況があります。
キャリアカウンセリングには様々なアプローチ、理論があります。共通の要素には下記のポイントがあることをカウンセリング心理学者のハー(Edwin L.Herr)とクレイマー(Stanley H.Cramer)を明らかにしています。
キャリアカウンセリングを学んでいくと、人は、環境から切り離されては生きられないだけでなく、同時に多様な環境(職場、組織、対人関係、文化、政治)に生きていることに思いあたります。こうした環境と効果的に折り合いをつけなければ、自分を活かすことはできません。そして、折り合いの付け方は人によって異なります。
こうした現実を見据えて、一人ひとりが納得のゆく取り組み方を選べるように、専門的な援助を提供することを任務としているのがキャリアカウンセラーです。
キャリアカウンセラーは、個人では対処も改善もできないような組織内の問題を見つけることに努力し、気づいたなら組織に働きかけて、そういう状態を改善すべく、変化を起こさせる行動がとれる専門家であることが求められています。組織をより発展させるために変化を起こすことも守備範囲です。
キャリアカウンセラーは「個人が悩みを抱えたり、問題に直面したりするのを待ってから援助するような悠長なことは考えない」と言われると、カウンセラーは相談室に相談に来る人を待つ聞き上手な人というイメージを持っている方は驚かれるのではないでしょうか。
「問題を完全に取り去ることは出来ない」という現実を前提に、問題の回避や早期発見ではなく、個々人が問題への対処能力を身につけることで、結果的に問題に悩まされないように考え、個人が必要となる前に、問題対処能力を改善、発達させたりする機会を積極的に提供することもキャリアカウンセラーの活動の一つです。
キャリアカウンセラーとして「働く場」を考えるうえで重要なことは、キャリアカウンセリングという仕事を通じて、自分自身の経験を最大限に活かしていくことを通じて、誰を対象にどのように役に立っていきたいのかを明確に意識しておくことが重要です。
キャリアとは
「キャリア」という言葉も非常に多様な意味を持ちます。辞書では、職歴、経歴、生涯、生き方などと訳され、社会学・心理学・経済学など学際的な論文もたくさんあります。ここでは、GCDF-Japanで採用している定義をご紹介します。
絶えず変化する社会環境の中で、「キャリア」という言葉で描写できる人間行動が多様に変化してきた現れとして、「プロティアン・キャリア」といった言葉も昨今注目を浴びました。多様な解釈をされる「キャリア」という言葉には、個別性/固有性、時間的経過、空間的拡がり、人と複数の環境との相互作用の結果という4つの共通概念が根底に内包されるということです。
実は、筆者がキャリアカウンセリングを学ぼうとした動機は「資格取得でキャリアアップをはかろうとした」ことにありました。しかし、GCDF-Japanの授業初日の講義では、「キャリアにはアップもダウンもない」という考え方を教わり、いきなり出鼻をくじかれたことを深く記憶しています。
「アップ」、「ダウン」といった言葉には、その言葉を用いる人の価値判断が含まれており、何をもって「アップ」、「ダウン」とするのかは人それぞれであるから、キャリアカウンセラーは、クライアントがそういう言葉を用いたとき、それはどういう意味で使っているのか、そこにはクライアントのどういう価値観が反映されているのかを意識しながら聴くのです。
『キャリアカウンセリング入門―人と仕事の橋渡し―』の著者である渡辺三枝子先生は、その前書きに、2000年夏、ベルリンで開かれた国際進路指導学会出席時のエピソードとして、キャリア発達の理論家として著名なサビカス博士との初対面の場面を記しています。
渡辺先生は、その時の二人の真剣なまなざしを忘れず、自身のモデルとして、またキャリアカウンセリングの理念を再確認したそうです。
キャリア支援の専門家の基盤として、自分が「他者の存在」をどのように認識し、「キャリア」をどのように解釈している自分であるかを知ることはとても重要です。筆者は、GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムへの参加を入口として、その後も、下記のような講座で学びを続けています。
【CCA】キャリアカウンセラー アドバンス・トレーニング
【CCA】キャリアカウンセラー エキスパート・トレーニング
【CCA】キャリアコンサルタントとしてのセルフモニタリング力向上講座
【CCA】スーパーバイザー養成・認定プログラム
筑波大学エクステンションプログラム キャリア・プロフェッショナル養成講座
キャリアコンサルタント、キャリアアドバイザー、GCDFとの違い
日本におけるキャリア支援者としての職種名・資格名は様々あります。
筆者自身のキャリア支援者としてのキャリアは、取得資格は「GCDF-Japanキャリアカウンセラー」・「国家資格キャリアコンサルタント」です。経験職務の一つに、キャリアアドバイザーと呼ばれる、人材紹介会社でキャリアチェンジを検討される方へ、職務履歴・転職時のPRポイントの整理、求人応募先選択のアドバイス等を行う職務もあります。また、組織の活性化と個人のキャリア自律の研究で名高い慶應義塾大学花田光世先生が提唱される「キャリアアドバイザー」の役割にも関心を寄せています。
ここでは、現在の日本でキャリア支援者に向けて発行されている「資格」の観点で紹介します。
キャリアコンサルタントとは
出典:厚生労働省「キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタント」
「キャリアコンサルタント」とは、キャリア形成や職業能力開発などに関する相談・助言(キャリアコンサルティング)を行う専門家として、2016年4月に職業能力開発促進法に規定された国家資格です。
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キャリアコンサルタントとは?資格取得までのステップと試験合格後の手続きを解説
「キャリアコンサルティング」は法律で以下のように定義されました。
それまで民間資格として普及していたキャリアコンサルティングに関する資格が、国家資格「キャリアコンサルタント」として法制化されたことで、「キャリアコンサルタント」という名称を使用して活動するには、キャリアコンサルタント試験に合格した上で、キャリアコンサルタント名簿に登録することが必要になりました。
「キャリアコンサルタント」が名称独占資格となる2016年まで、人材紹介や再就職支援事業を行っている企業で、求職者への職業紹介サービス担当者の職種名称を「キャリアコンサルタント」と称して名刺等に記載する場合が多くありました。現在では、企業内職種名称としては法律で規制されない「キャリアカウンセラー」「キャリアアドバイザー」という名称に置き換え、取得資格に「キャリアコンサルタント」や「GCDF-Japanキャリアカウンセラー」などと併記するようになってきました。
一方「キャリアコンサルタント」という職業が厚生労働省によって日本社会に導入されたのは、2001年「第7次職業能力開発基本計画」からです。日本のキャリアコンサルティングは、キャリアカウンセリングをベースに1980年代に構想され、30年以上の時を経て現在に至っています。
「キャリアコンサルタント」になるには、厚生労働大臣が指定する試験団体が行う「キャリアコンサルタント試験」に合格することがその一歩目です。
キャリアコンサルタント試験の主な受験資格は要件は下記のとおりです。
1 | 厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了した方 |
2 | 労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談に関し3年以上の 経験を有する方 |
3 | 技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験又は実技試験に合格した方 |
国家試験では、キャリアコンサルティングに関する専門的な問題が出題され、実技もあります。初めて学ぶ方や相談実務の経験がない方は、上記1.の受験資格にあたる「厚生労働大臣が認定する養成講習」の受講から始めることが推奨されています。
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キャリアコンサルタントは独学で取得できる?受験資格や勉強法を解説
キャリアコンサルタント養成講習は、「専門実践教育訓練給付金」の指定対象講座となっています。事前にハローワークでの受給資格確認手続きを経て指定を受けている養成講習を受講すると、講習修了を申請した時点で50%、最短の国家試験合格により国家資格登録を行うと追加で20%と、講習受講料の最大70%の教育訓練給付金を受給することができます。
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専門実践教育訓練給付金の利用について
厚生労働省が公表した「キャリアコンサルタント試験結果の概要」を見ると、受験者の95%以上が養成講習修了者で、実務経験者よりも高い試験合格率となっています。
GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムは「キャリアコンサルタント養成講習」であり、「専門実践教育訓練給付金指定講座」です。年齢・経験・学歴等による受講制限は設けていません。キャリアコンサルタント試験科目に準じて、キャリア支援実務者向けの民間資格「GCDF-Japanキャリアカウンセラー」のコンピテンシー(能力要件)を習得するプログラムとなっています。
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GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム
厚生労働大臣認定キャリアコンサルタント養成講習としてGCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムを主催しているのは、特定非営利活動法人キャリアカウンセリング協会です。キャリアカウンセリング協会は、厚生労働大臣指定キャリアコンサルタント更新講習ラインナップが業界最大級であることも特長のひとつです。
国家資格キャリアコンサルタントの制度についてもう1つ注目すべき点は、2019年4月から施行された「職業能力開発促進法施行規則等の改正」です。
従来から、「職業能力開発促進法」では、事業主は、従業員の職業能力開発を計画的に企画・実行するために、その取組を社内で積極的に推進するキーパーソンとして「職業能力開発推進者」を選任することに努めなければならないとされてきました。そして2016年には、職業能力開発推進者を「キャリアコンサルタント等の職業能力開発推進者の業務を担当するための必要な能力を有する者」から選任すると改正されました。
人材育成に取り組む事業主が、事業主が労働者に対して訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する「人材開発支援助成金」を利用するにあたっては、職業能力開発推進者の選任が要件となっているため、企業でのキャリアコンサルタントの活用は一層促進されています。
ジョブ・カードを活用して様々なキャリア形成支援を無料で行っている「キャリア形成サポートセンター」事業では、個人(在職者)の自律的なキャリア形成や、企業の組織活性化、生産性向上などに向けてキャリアコンサルタントが活躍しています。
今後の労働市場の動向を予測し、労働移動の重要性や、主体的なキャリア形成を行うための環境整備とその課題を分析、提言した令和4年度労働経済白書には、「キャリアコンサルティング等を通じた主体的なキャリア形成の意識付けや、自己啓発によるスキルの向上が、転職などのキャリア形成の希望をかなえる重要な要素である」ことが記載され、企業・需給調整機関・教育機関・地域活動等様々な場面で、キャリアコンサルタントへの期待は高まっています。
キャリアアドバイザーとは
ここでは、慶應義塾大学名誉教授の花田光世先生が提唱する「キャリア・アドバイザー」について紹介します。
花田先生は、キャリアカウンセリング協会特別研究会員でもあり、厚生労働省「キャリアコンサルタント登録制度等に関する検討会」や「セルフ・キャリアドック導入支援事業推進委員会」の座長も歴任されています。
「キャリア・アドバイザー養成講座」は、現在、慶應大学丸の内シティキャンパス・慶應義塾大学SFC研究所キャリア・リソース・ラボラトリー(CRL)共催で開催されています。キャリア・アドバイザー養成講座の公式ページには、下記のプログラム紹介が掲載されています。
花田先生は、企業戦略や組織・人事システムと自律型キャリアデザインシステムの融合と相互補完活動を担う、従来にない組織内プロフェッショナルの役割を「キャリア・アドバイザー」として提唱しています。組織の中にあって、しかしあくまでも個人の側に立って、個人のライフキャリアサポート支援を担う「新たな役割と機能」を担う人材としての「キャリア・アドバイザー」。養成講座の対象は下記のように掲載されています。
2016年、職業能力開発促進法の改正・施行は、労働者に職業生活の設計(キャリアプラン)と能力開発について自ら責任を持つよう促し、企業には従業員に対するキャリアコンサルティングの機会確保と能力開発の支援を求めました。
法律で求められている「職業生活の設計とそのための能力開発」を具体的に実践する方策として、企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施することを通じて、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組みを「セルフ・キャリアドック」と言います。
出典:厚生労働省「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開
「セルフ・キャリアドック」の理解に基づく労働者個々人のキャリア開発・形成支援と、更には組織活性化への橋渡しへの工夫が求められる企業内キャリアコンサルタント。花田先生は、企業内キャリアコンサルタントに向けて、キャリアカウンセリング協会の主催セミナーの中でその役割について説明しました。
GCDFとは
筆者のGCDF-Japan資格証(2023年1月現在)
ここでは「GCDF-Japanキャリアカウンセラー」資格の特長について紹介します。
GCDFはGlobal Career Development Facilitatorの略称で、「個人のキャリア・ディベロップメント支援をする職業に従事する人のための資格」として1997年に生まれました。
米国・クリントン政権の雇用支援対策の成果の一つで、日本の職業安定所(ハローワーク)機能を拡充したワンストップ・センターを全国に展開し、より高品質なサービスを提供し、失業問題で悩んでいる国民を支援するために、信頼性の高いキャリア支援者を早急に生み出す必要性から、カウンセラー教育に携わる有識者などにより、キャリア支援者として基礎的な知識・スキルをもつ実務家レベルの資格・カリキュラムとして開発されました。
GCDF-Japanが開発された1990年代の日本では、労働・就労環境の変化によって「個人主導のキャリア」への興味・関心や、キャリア支援実務家を養成するニーズも高まっていました。一方で、キャリアカウンセリング分野における専門的訓練が、米国などと比較して不足していることが日本の有識者の間で指摘されていました。
GCDF-Japanの発足にあたっては、米国GCDFをベースに、カウンセラー教育の課題、日本の雇用環境や労働市場にあわせた改訂が試みられました。結果、約2年の歳月をかけて国内外の各有識者の助言を受けながら株式会社リクルートによりトレーニングおよびテキストが開発され、1999年、米国CCE,Inc*1により承認されて今に至ります。
2003年には、日本におけるキャリアカウンセリングの普及およびキャリアカウンセラーの技能向上の機会と教育の提供を目的に「特定非営利活動法人キャリアカウンセリング協会(CCA)」が設立されました。キャリアカウンセリング協会は、全米キャリア・ディベロプメント協会 (NCDA)*2、全米認定カウンセラー協会(NBCC)*3などと情報交換を行ったうえで、米国CCE,Inc.が発行するGCDF-Japanの資格窓口として、CCE,Incと協力関係を結んでいます。
*1 CCE,Inc・・・The Center for Credentialing and Education,Inc.全米認定カウンセラー協会(NBCC)の関連機関で、GCDFカリキュラムの内容の認定、資格試験の実施・認定を行っている。
*2 全米キャリア・ディベロプメント協会 (NCDA)・・・The National Career Development Association.米国のキャリア分野の有識者および実践家のための協会。GCDFカリキュラム策定に有識者が協力。GCDF-U.S.養成カリキュラムを有し、継続教育も提供している。
*3 全米認定カウンセラー協会(NBCC)・・・The National Board for Certified Counselors, Inc. 全米最大規模数のカウンセラー認定資格の認定発行、各州のカウンセラー試験の実施運営を行う機関。
GCDF-Japanキャリアカウンセラーを取得するためには、米国CCE,Inc.による審査を受ける必要があり、この審査に通過してはじめて資格認定を受けることができます。
GCDF-Japanキャリアカウンセラー資格認定審査 申請のための3つの条件
- GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニング プログラム修了
- 下記の試験*のいずれかに合格(学科・実技ともに)
・CCA実力診断プログラム(ベーシック)
・キャリアコンサルタント試験(国家資格)
・キャリアコンサルティング技能検定(国家資格)
*各試験の合格科目を組み合わせての申請も可能 - キャリア実務*における必要経験年数の到達
キャリアコンサルタント国家資格は、厚生労働大臣が認定するキャリアコンサルタント養成講習を受講修了して、キャリアコンサルタント試験に合格することで登録することができます。キャリア支援の実務経験が無くても取得できますし、学歴条件もありません。一方、GCDF-Japanキャリアカウンセラーは、最終学歴に応じて設定されているキャリア支援の実務経験の内容と期間について自己申告書類をCCE,Incに提出して認定を受ける「実務家」を証明する資格です。人材サービスや企業人事部門・教育機関・需給調整機関等に携わる人材のプロフェッショナルの方々の取得比率が高いです。
特に、大手人材サービス企業であるキャリアカウンセリング協会の基幹会員企業*は、キャリアカウンセリング・キャリアコンサルティングの普及活動、キャリアカウンセラー・キャリアコンサルタントの技術向上、地位向上、活躍の場を支援する活動に共に取り組み、GCDF-Japanキャリアカウンセラー資格者向けの仕事情報提供や、従業員のGCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム受講支援などを行っています。
*キャリアカウンセリング協会の基幹会員企業・・・株式会社パーソル総合研究所、パーソルホールディングス株式会社、マンパワーグループ株式会社、株式会社リクルートスタッフィング、株式会社リクルートホールディングス(五十音順)
アメリカにおけるキャリアカウンセリングの沿革
アメリカにおいては、「キャリアカウンセリング」という言葉が世に出たのは1970年代でした。一方、キャリアカウンセリングの起源は、20世紀初頭に職業選択の自由を背景に展開されたパーソンズ(Parsons,F.)の「職業指導運動」であるとされています。
ここからは、現在で言うところのカウンセリングという専門的援助過程と、カウンセリングを専門とする職業「カウンセラー」のルーツである「職業カウンセリング」について紹介します。
1900年代の職業指導運動が起源
19世紀後半、産業革命によって人々の仕事環境や生活状況が激変し、ヨーロッパ各地からの多くの移民労働者・若者が貧困であえいでいたアメリカ・ボストンで、一人の社会改革運動家、パーソンズによって始められたのが「職業カウンセリング」です。
農業基盤から製造業基盤の経済へ移行し、多くの若者が社会環境の変化の波に飲み込まれ、社会悪も広がる状況の中で、個人の自由をはじめとする基本的人権を守ろうとした社会改革活動家達は、未来ある若者にとって「自分の将来を自分で築けるようになることは、個人にとってもアメリカ社会の将来にとっても重要なことだ」という理念をもって、定職につけるよう職業教育や職業訓練を活発にすすめていました。
パーソンズは、多くの若者の失敗の原因は、技能不足だけの問題ではなく、場当たり的な職探しが多くの失敗の原因であることに気づき、1908年にボストン職業相談を開所して職業ガイダンスを体系的に実施していきました。
翌1909年に出版された「職業の選択」(Choosing a Vocation)において、パーソンズは「人と職業の適合」という基本原理をもとに、科学的な職業選択モデルアプローチや、職業カウンセリングについての独自の概念とプロセスを述べています。
「もし人々が就職活動の過程で偶然のチャンスに任せるより、職業を選択することに積極的に従事するなら、自分たちのキャリアに満足し、雇用者のコストは削減され、その後の被雇用者の能率は増加するだろう」
パーソンズのこうした考え方は、その後のキャリア選択と発達理論の核となり、世界各国の職業指導の普及・発展に大きな影響を与えることになります。
パーソンズの遺志を受け継ぎ1913年に創設されたのが全米職業指導協会(National Vocational Guidance Assotiation::NVGA)であり、現在は全米キャリア・ディベロプメント協会(National Career Development Assotiation:NCDA)に改名されています。
アメリカにおける「キャリアカウンセラー」
職業指導運動から百余年、アメリカでは、職業選択行動や職業・職場適応行動、意思決定プロセス等の研究、職業行動の発達の研究などをはじめとして、心理学の分野において職業生活における人間行動の研究が進みました。
また、カウンセリングも、さまざまなパーソナリティ理論や臨床心理学の影響を受けながらも、1950年代には独自のアイデンティティを確立しました。職業カウンセリングは、カウンセリング心理学の一応用分野となり、大学院の修士過程レベルと博士過程レベルでのカウンセラー教育の体系が確立すると同時に、心理学関連の独立した専門職としての地位を築きました。
アメリカにおける「キャリアカウンセラー」資格や免許の取得には、大学院修了後、数年の実務経験とスーパービジョンやコンサルテーションを定期的に受けることが必要、といった厳しい条件があります。
アメリカにおけるキャリア関連資格
日本におけるキャリアコンサルタント資格と同程度のアメリカにおける主要なキャリア関連資格は下記の2つです。
・The Center for Credentialing & Education, Inc. (CCE)が認定機関となる Global Career Development Facilitator (GCDF-U.S.)
・全米キャリア開発協会(The National Career Development Association:NCDA)が認定機関となる Certified Career Services Provide(CCSP)
GCDFやCCSPには120 時間相当の養成プログラムが設けられており、内容的にもキャリアコンサルタントと同程度の資格です。
アメリカでは GCDF や CCSP 以外にも、3 日間のワークショップに参加することで取得ができる入門的な資格として、Career Planning and Adult Development Network による Job and Career Development Coach(JCDC)や Job and Career Transition Coach(JCTC)や、領域特化型の資格として、The Professional Association of Résumé Writers & Career Coaches(PARWCC)が主催する履歴書に関するアドバイスを行う Certified Professional Résumé Writer(CPRW)、面接に関するアドバイスを行う Certified Employment Interview Professional(CEIP)などがあります。
これらのアメリカにおけるキャリア関連資格に関して日本語で読める文献には、独立行政法人労働政策研究・研修機構が公表した「先進各国のキャリア関連資格及びキャリア支援のオンライン化に関する研究」資料(2022 年 3 月)があります。
出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「先進各国のキャリア関連資格及びキャリア支援のオンライン化に関する研究」、2022 年
キャリアカウンセラーが活躍する場と支援
キャリアカウンセラー・キャリアコンサルタントの活躍の場や仕事内容について、代表例をご紹介します。
企業
- 職業能力開発推進者
- 人事・・・人材計画、採用、人材配置、人材開発、人材管理など
- 教育・研修・・・人材開発、教育・研修の実施など
- 企業内カウンセラー・・・カウンセリング室の設置・運営、従業員へのキャリアカウンセリング、セルフ・キャリアドックの推進、組織開発、管理職支援、EAP / 社員支援プログラム(メンタルヘルス不調の従業員を支援するプログラム)の運営スタッフなど
- 管理職・マネジメント業務・・・ 日々のマネジメントでのメンバーフォロー、キャリアカウンセリングなど
学校や教育機関
- 大学生への就職支援・・・就職セミナーの企画・実施、セミナー講師、キャリア関連授業の担当、キャリアカウンセリング、就職活動のアドバイスなど
- 大学生へのキャリア支援・・・将来に向けての履修相談・アドバイスなど
- 中学生・高校生へのキャリア支援・・・進路・履修相談、就職相談、「働く」ことについての授業・セミナーの企画・実施、セミナー講師、将来に向けての履修相談・アドバイス、キャリアコンサルティングの手法を活かしたキャリア教育の企画・運営
- 教員組織、学校事務組織やメンタル相談窓口との連携
ハローワークや人材企業など
- ハローワーク・・・就職・転職希望者への登録~マッチング・キャリアカウンセリング・フォロー、特定一般教育訓練・専門実践教育訓練など教育訓練の選択支援(訓練前キャリアコンサルティング)
- 派遣業界・・・就業希望スタッフへの登録~マッチング・スタッフフォロー・キャリアカウンセリング、など
- 人材紹介関連・・・職業紹介希望者への登録~マッチング・キャリアカウンセリングなど
公的機関や自治体
- JOBカフェ・・・就職・転職希望者への登録~マッチング・キャリアカウンセリング・フォローなど
- 若年層向けの各種支援・・・ニート・フリーター・引きこもりの若者等への支援、就業支援、キャリアカウンセリングなど
- 地方自治体などでのサポート・カウンセリング… UIターン就職情報提供、各種勉強会・セミナーの企画・運営、キャリアカウンセリングなど
- 治療と仕事の両立支援・・・両立支援コーディネーターなど
- ダイバーシティ就労支援・・・就労困難状況にある多くの方々に向けて保護就労から一般就労に至る多様な就労をサポート
キャリアカウンセラーになるには
日本において「キャリアカウンセラー」の名称・資格には、法的な規制はありません。
ここでは、20年以上日本で養成されている「GCDF-Japanキャリアカウンセラー」資格の取得要件について紹介します。
GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムを受講・修了し、キャリアコンサルタント国家試験に合格する
キャリアカウンセリング協会と株式会社パーソルテンプスタッフが主催する「GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム」は、厚生労働大臣認定のキャリアコンサルタント養成講習です。トレーニングプログラムの受講はどなたでも参加可能ですが、企業人事担当者・人材サービス関連職種・教育機関に勤務している方など、キャリア支援のプロを目指す方の受講率が高い特長があります。
GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムの受講修了者で、キャリアコンサルタント試験の合格者は、キャリア支援の実務経験を自己申告することで、GCDF-Japanキャリアカウンセラー資格の発行要件も満たせます。つまり、キャリアコンサルタント国家資格・GCDF-Japanキャリアカウンセラー資格の2つの資格を同時に取得することができるのです。
キャリアコンサルタント養成講習は、GCDF-Japan以外にも複数の民間団体で実施されていますが、GCDF-Japanキャリアカウンセラー資格は、GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム受講修了者であることが資格発行要件の1つです。
GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムを受講・修了し、CCA実力診断(ベーシック)に合格する
キャリアカウンセリング協会が行うGCDF-Japan試験は、2015年度まで標準レベル・キャリアコンサルタント能力評価試験でした。キャリアコンサルタント試験が開始されてからは「CCA実力診断プログラム(ベーシック)」と名称を変更し、キャリアコンサルタント試験の模擬試験としても受験できるサービスになっています。CCA実力診断プログラム(ベーシック)は、キャリアコンサルタント試験の約2ヶ月前に、国家試験に合わせた出題形式で実施されます。キャリアカウンセラー(キャリアコンサルタント)の基礎的能力の測定・診断として2000年より実施しているCCAキャリアカウンセリング協会の独自「試験」の合格結果でも、GCDF-Japanキャリアカウンセラー資格申請の要件を満たします。
GCDF-Japanキャリアカウンセラー資格は、CCA実力診断プログラム(ベーシック)・キャリアコンサルタント試験の科目組み合わせの合格でも認定申請が可能です。CCA実力診断プログラム(ベーシック)の合格者は、キャリアコンサルタントになるよりも早く、GCDF-Japanキャリアカウンセラー資格を取得できるよう、申請スケジュールが組まれています。
まとめ
よいキャリアカウンセリングとは、相談に来られるクライアントの不安や悩みを聞いて心理的安心を得てもらうことにとどまらず、クライアントの現実の課題が解決されるカウンセリングです。
例えば、何とか仕事に就いて収入を得たいと切実に悩んでいるクライアントの課題は就業が実現することであり、業績を上げたいと苦しんでいるクライアントの課題は自分が納得できる業績を上げることです。
カウンセリングルームの密室から飛び出して、クライアントとともに求人開拓が必要になることもあるし、その上司と掛け合うことも必要になってくる場面もあります。個人のニーズと組織(環境)のニーズの最善のブレンドを目指し、個人と組織に働きかける「キャリアカウンセラー」について興味が湧いたら、ぜひ、GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム受講相談会などで情報収集を続けていただきたいと思います。
この記事を書くにあたり、下記のページ・書籍を参考にしました。キャリアカウンセリングに関心が高まった方はお読みになってみてください。
- 厚生労働省「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」報告書について、2002年
- 特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会「特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会15周年史」
- リクルートワークス研究所 「Works 33 日本的雇用システムの未来デザイン」、1994年4月発行
- リクルートワークス研究所 「Works 41 キャリアカウンセリングの未来像」、2000年8月発行
- 渡辺三枝子・エドウィン・L. ハー 『キャリアカウンセリング入門―人と仕事の橋渡し』ナカニシヤ出版、2001年
- 國分康孝『カウンセリング心理学入門』 PHP新書、1996年
- 渡辺三枝子『カウンセリング心理学ーカウンセラーの専門性と責任性』ナカニシヤ出版、2002年
- 渡辺三枝子編著『キャリアの心理学―キャリア支援への発達的アプローチ』ナカニシヤ出版、2003年
- 金井壽宏編著『会社と個人を元気にする キャリア・カウンセリング』日本経済新聞社、2003年
- 渡辺三枝子編著『キャリアカウンセリング実践』ナカニシヤ出版、2016年
- 道谷里英『キャリアを支えるカウンセリング: 組織内カウンセリングの理論と実践』ナカニシヤ出版、2018年
- 古野庸一『「働く」ことについての本当に大切なこと』白桃書房、2019年
- 益田勉『空海に学ぶキャリアデザイン』春風社、2020年
- 渡辺三枝子編『キャリアカウンセリング再考―実践に役立つQ&A』ナカニシヤ出版、2013年
- 木村周・下村英雄『キャリアコンサルティング理論と実際 6訂版 専門家としてのアイデンティティを求めて』雇用問題研究会、2022年
- 渡辺三枝子編著『オーガニゼーショナル・カウンセリング序説 組織と個人のためのカウンセラーをめざして』ナカニシヤ出版、2005年
- 日本キャリアデザイン学会監修『キャリアデザイン支援ハンドブック』ナカニシヤ出版、2014年
- 國分康孝・新井邦二郎監修『カウンセリングのすべてがわかるーカウンセラーが答える本当の心理学ー』技術評論社、2011年
- 岡田昌毅『働くひとの心理学―働くこと、キャリアを発達させること、そして生涯発達すること 』ナカニシヤ出版、 2013年
- キャリアカウンセリングを考える会編『「キャリアコンサルタント新能力要件」を読み解く』ナカニシヤ出版、2020年